【ToR1 概要】トルデジアン/アオスタ・アルタヴィア1概要編

トルデジアン(アオスタ・アルタヴィア1) 

ヨーロッパ・アルプスを代表する峰々をイタリア側から望むロングトレイル、アオスタ・アルタヴィア1。巨人の旅「トルデジアン」の北側部分として有名で、イタリア北部アオスタ谷を歩いてヨーロッパ最高峰モンブラン(4,810 m)やグラン パラディーゾ(4,061 m)、モンテローザ(4,634 m)、マッターホルン(4,478 m)などの麓を巡り、総距離約200kmを13日間で踏破します。今回は概要編。

アオスタ・アルタヴィア

トルデジアン(巨人の旅、周遊トレイル)

イタリア北部アオスタ谷には高所のロングトレイル(アルタヴィア、Alta Via)が4本あり、特に人気なのがアルタヴィア1と2。これらを繋いだ周遊トレイルは、巨人の旅「トルデジアン(英Tour of the Giants、伊Tor des Géants)」として有名で、毎年開催されるトレイル・レースにはイタリア国内外から多くのランナーが参加しています。

この周遊トレイルでは、グラン・パラディーゾ国立公園やモン・アヴィック自然公園などを通り、手付かずの表情豊かな自然風景を堪能することが出来ます。勿論、氷河やアオスタ渓谷のブドウ畑なども見所の一つ。また、アルタヴィア3と4を繋いだ周遊トレイルもあり、これらは上述のトレイルよりも難度が高く、より険しいルートとなります。

アオスタ アルタヴィア1

今回チャレンジするのが、アオスタ谷のアルタヴィア1。イタリアには、ドロミテにも高所のロングトレイル、アルタヴィアがある(以下記事ご参照)ので、両者を区別するために「アオスタの」や「ドロミテの」という地名を付けます。

(ご参考)【AV1概要編】アルタヴィア1/ドロミテ山塊のロングトレイル

アオスタ谷のアルタヴィア1は、「巨人の道(アルタ・ヴィア・デイ・ジガンティ、Giro dei Giganti)」とも呼ばれ、モンテ・ローザやマッターホルン、モンブランなどヨーロッパ最高峰の麓を横切り、アルプスの絶景・自然美を満喫出来るトレイルです。また、チーズや生ハムなどアルプスの生活に根付いた牧畜・酪農文化や、山深い渓谷で暮らしてきたヴァルザー人の伝統・歴史等についても触れることが出来ます。

スタート地点はドーラバルテア川左岸の町ドンナス、ゴール地点はモンブランの麓町クールマイヨールで、総距離は約200km。途中には山小屋やホテル、キャンプ場などの宿泊施設があり、一部の区間ではバスやリフトなどの交通機関も利用可。トレイルの平均標高は約2,000m、最高地点では3,000mを越え、山岳地帯や牧草地、森林帯などを通ります。ルートは良く整備されており、標識類も充実しています。

アオスタ アルタヴィア2

アルタヴィア2はトルデジアンの南側部分で、ルートの大部分がグラン・パラディーゾ国立公園とモン・アヴィック自然公園であることから「自然歩道(Nature trail)」と呼ばれています。ここにはアイベックスやシャモア、イヌワシなどアルプスの希少且つ多様な動植物が生息し、今でも手付かずの自然が残っています。また、この辺りには伝統文化・工芸が色濃く残る村落が点在し、こうした文化に触れることも出来ます。

スタート・ゴール地点は、アルタヴィア1と同様ドンナスとクールマイヨール(以下地図ではクールマイヨール出発前提)。平均標高もアルタヴィア1と同様約2,000m、最高地点は3,000mを越えます。機会があれば、このルートについてもチャレンジしてみたいと思います。

行程

アオスタ谷アルタヴィア1の標準コースは、後述ガイドブックによると全行程13日間(又は16日間)、総距離179km、累積標高差+/-約14,100mです。宿泊事情などもあって、実際に踏破した総距離は約200kmでした。

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ガイドブック

アオスタ谷のアルタヴィア1を紹介しているガイドブックは以下の本(英語)です。このシリーズはこれまで踏破したロングトレイルでも毎回利用しており、ルート検討に必要な情報が網羅されています。ただし、これまでの例と比較すると、想定コースタイムやルート説明の面でやや難解な部分があったので、実際の使用に際しては少し注意が必要。

一方で、今回もこの本をベースとしつつ、腕時計のナビゲーション機能をフル活用しました。これで大分助けられましたが、毎年9月に行われるトルデジアン・レースのルートと混同しやすい箇所もあるため、地図があると更に良いです。

Trekking the Giants’ Trail: Alta Via 1 through the Italian Pennine Alps

アオスタ アルタヴィア1 トレッキングガイド(英語)

腕時計

ロングトレイルでは必需品と言える腕時計。以前は道に迷うと地図を見てルートを確認していましたが、近年はスマートウォッチの性能が向上し、GPSナビゲーション機能を利用して簡単にルート確認が行えるようになりました。今回使用したのはスント(SUNNTO)社のもので、ルートの分かり難い箇所でも安心して進むことが出来ました。

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コース日程

今回実際に踏破したコース日程は全13日間、総距離198km(図表1参照)です。上述の通り、スタート地点はドンナス、ゴール地点はクールマイヨールとし、アオスタ谷アルタヴィア1の完全踏破にチャレンジしました。

図表1:行程表

日数行程距離上り下り時間
1日目Donnas – Sassa13.8km1,550m500m5h20min
2日目Sassa – Rifugio Barma14.3km820m300m6h00min
3日目Rifugio Barma – La Gruba15.7km900m1,400m7h10min
4日目La Gruba – Gressoney Saint Jean16.1km900m1,140m6h45min
5日目Gressoney Saint Jean – Vieux Crest13.9km1,400m900m5h50min
6日目Vieux Crest – Ref. Grand Tournalin11.7km1,020m450m4h00min
7日目Ref. Grand Tournalin – Ref. Barmasse11.8km1,000m1,300m6h00min
8日目Ref. Barmasse – Rif. Cuney16.6km1,200m650m7h10min
9日目Rif. Cuney – Oyace17.0km1,000m1,300m6h00min
10日目Oyace – Ollomont/Rey14.0km1,080m1,150m5h25min
11日目Ollomont/Rey – Saint Rhemy en Bosses20.1km1,460m1,300m7h20min
12日目Saint Rhemy en Bosses – Rifugio Frassati10.9km1,030m100m4h00min
13日目Rifugio Frassati – Courmayeur19.5km670m1,990m7h00min
合計198km14,030m12,480m

ロングトレイルのハイライト

 序盤:1~4日目

スタート地点は初代ローマ皇帝アウグスティスが整備したドンナスへの入場門(標高330m)。初日は山間部の伝統的な村々を巡りながらサッサ(標高1,550m)まで一気の登り。2日目はアルペンローズが咲き誇る絶景トレイルを進んでカリゼイ峠、山小屋コーダ(標高2,252m)を越えた後、ヴァルニョ湖畔(標高1,664m)への下りを経て山小屋バルマ(標高2,060m)へと登り返します。

3日目は、早朝モルゲンロートで山肌が赤く染まる中、高度を保ちつつ荒々しい山道から農道へ抜け、暫くその道を進ん後、急坂を登り1つ目の峠(標高2,348m)を越えます。次に山肌斜面をトラバースしながら雪渓や小川を渡り2つ目の峠(標高2,311m)を越え、今度は牧草地を抜けて3つ目の峠・分岐点(標高2,184m)へ到達。最後はニエル(標高1,550m)へと下ります。

4日目は、珍しいアルプスの花々が咲き誇る山道を一気に登りラゾネイ峠(標高2,400m)を越えます。今度はここから1,000m強の下り。氷河が削ったU字谷や牧草地を抜け、途中の山小屋で地元チーズを購入。谷底へと下った後、平坦なトレイル道を進み、サヴォイア城を見学後グレッソネイ・サイント・ジェアン村(標高1,385m)へ到達。城の正面からは名峰モンテローザが見渡せます。

中盤:5~9日目

中盤5日目は平坦な谷底を進んだ後、1,400m強を急登。森林帯、牧草地を登りピンター峠(標高2,777m)を越えます。雪渓を渡りアルプスの花々が咲き誇るルートを下り、中腹の山小屋ヴュー・クレストへ。6日目はマッターホルンを眺めながら谷底の村サイント・ヤックエス(標高1,689m)へ下った後、視界の開けた山道を1,000m弱登り返して山小屋グランド・トルナリン(標高2,544m)へ到達。

7日目は早朝山小屋前に突然姿を見せたシャモアの群れ観察でスタート。昨日から続く登りを再開しナンナズ峠(標高2,775m)を越えた後、雄大な景色を楽しみながら1,000m強下って伝統家屋の残る谷底の村クレタヅ(標高約1,600m)へ。レストラン・ランチを満喫後、山道を登ってチニャナ湖畔の山小屋バルマス(標高2,170m)で宿泊。

8日目、9日目が本ロングトレイルの中でも核心部と言えるルートで、人里離れた大自然の中へと分け入ります。平均標高2,600m程度を維持しながら峠越えの連続、アルプスの高山植物が咲き乱れ、美しい湖、氷河が作り出したカールやモレーン、荒々しく間近に迫る雄大な山塊など枚挙に暇がない世界が拡がります。ルート上の小さな山小屋キュニー(標高2,656m)で一泊、次の谷オイアチェ(標高1,377m)へと抜けます。

終盤:10~13日目

終盤10日目は峠越えの一日。ルートの整備状況がこれまでよりもやや悪く、村からトレイルへの入口で少し迷うも、GPS時計を頼りにルートへ復帰。山道を登ってブレッソン峠(標高2,480m)を越え、今度はジグザグ道や新設中の急なルートを下りオッロモント/レイの村(標高約1,400m)で宿泊。夕食は地元食材(アオスタ・チーズや地元牛)を用いたおいしい料理を堪能。

11日目は長丁場の一日。麓町から林間コース、牧草地、農道、トレイル道を登りシャンピヨン峠(標高2,709m)を越えます。途中の酪農家がチーズの小売をしていたので数種類のチーズをゲット、優雅な食事を満喫。峠からは急坂を下り、その後は比較的緩やかな下り。後半は農道や道路を進んで距離を伸ばし、山間の小さな村サイント・ルエンイ(標高約1,600m)へ到達。ここは生ハムが有名。

12日目は宿泊先の予約事情で短い一日。トレイル道を登り、峠中腹の山小屋フラッサーティ(標高2,500m)で宿泊。最終日13日目は早朝から最難関のマラトラ峠(標高2,928m)へのアタック。峠付近は非常に滑り易い急斜面のガレ場。これを超えると、残りは下り。名峰グランドジョラスやモンブランを眺めながら、麓町のゴール地点クールマイヨール(標高1,224m)へと下ります。これで完全踏破です。

宿泊事情:山小屋・ホテル泊

宿泊先については、ガイドブック記載の宿を基本とし、ホテルの個室から山小屋のドミトリールームまで幅広く利用。麓町のホテルでは夕食でアオスタ谷の伝統料理を満喫出来た一方、一部の山小屋では冷水シャワーのみという施設もあり、宿泊先到着後に一喜一憂する日々でしたが、いずれの宿もトレイル開始前に全て予約済。

尚、トレイル最終盤では、大人気ロングトレイルのツール・ド・モンブラン(以下記事参照)とルートが重なり、人気の山小屋が予約不可でしたので、早めの予約が重要です。次回は各日の詳細編、今回はここまで。

(参考)【TMB概要】ツール・ド・モンブラン~ロングトレイル~概要編

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