【HR概要編】オート・ルート/モンブランからマッターホルンを歩く~絶景ロングトレイル

オート・ルート(シャモニー~ツェルマット)

ヨーロッパ・アルプスを代表する二つの名峰、モンブランとマッターホルン。これら名峰の麓町(フランス・シャモニー、スイス・ツェルマット)を繋ぐ約180kmのロングトレイル、オート・ルート(Haute Route)は、ハイキングの盛んなヨーロッパでも屈指の人気コースとして知られ、アルプスの雄大な絶景は勿論、氷河歩きや高所歩道などのスリル満点のトレイルも満喫できます。コース難度はやや高いですが、踏破したときの充実感は格別でした。今回はこの概要編です。

オートルートとは 

オート・ルート(Haute Route)とは、ヨーロッパ・アルプス最高峰モンブランの麓町フランス・シャモニーから、アルプス三大名峰の一角マッターホルンの麓町スイス・ツェルマットへと続く約180kmのロングトレイルを指します。

ヨーロッパアルプスを代表する二名峰を繋ぐこのコースは、ヨーロッパアルプスの中でも標高が高く、険しい山の多い西アルプス・ペンニネアルプス山脈(英: Pennine Alps=ペナイン・アルプス)の大自然・絶景を身近に体感出来ることから、数あるヨーロッパのロングトレイルの中でも屈指の人気を誇ります。勿論、スタート、ゴール地点では、憧れの二名峰が応援・出迎えてくれます。

コースには氷河歩きや長梯子を登るスリル満点の箇所があるほか、上り下りの激しい長距離トレイルの日もある(コース設計に拠ります)ため、ツール・ド・モンブランと比較してコース難度はやや高いですが、それを上回る絶景・感動があると思います。

コースは標高1,200~3,300メートルの範囲で登り・下りを繰り返します(最高点は3,301メートル)。全行程の踏破には、脚力等にもよりますが一般に10日前後とされており、コース沿いに点在する山小屋やホテル、テント泊であればキャンプ場を利用します。

オート・ルートの変遷~ハイカー・コースとスキー・コース

モンブランとマッターホルンを繋ぐルートは古くから存在していましたが、このルートは無数の高峰や氷河を越えていく非常に困難で危険なルートでした。こうした中、19世紀中頃に英国人を中心とした多数の登山家による新ルート開拓が行われ、比較的安全なルートが確立されました。一方、補給面では現在のようにルート上に山小屋が幾つもある訳もなく、踏破するには必要な食糧等を全て運んでいく必要がありました。

19世紀後半に入ると、アルプス山中での移動手段としてスキーが脚光を浴びます。この流れを受けて、オート・ルートにおいても、既存の山小屋を拠点に冬から春にかけてスキーによる新ルートが発達、これがオート・ルートの主流になっていきます。

一方で、ハイカーよる夏場のオート・ルートは独自の発展を遂げていきます。アルプスの大自然を体感出来るこのコースは、冬・春先のルートとは異なるハイカーのオート・ルート(Walker’s Haute Route)として、今でも多くのハイカーを惹きつけ続けています。

おススメのガイドブック

今回利用したガイドブックは以下の本(英語)です。このシリーズはこれまで踏破したロングトレイルでも毎回利用しており、必要な情報がよく網羅されています。現地ではこの本と詳細地図を活用しました。

Cicerone Trekking Chamonix to Zermatt: The Classic Walker's Haute Route
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オートルート(シャモニーからツェルマット) トレッキングガイド(英語)

コース日程

実際に踏破した際のコース日程は全12日間でした(図表1参照)。今回はテントや寝袋、ガス缶等の調理道具を持参したテント泊を含むロングトレイルでしたので、コース時間は少し長めです。また最終日は素晴らしい眺望で有名な高所歩道「Europe Weg」を歩く予定でしたが、悪天候にコース崩落が重なり迂回ルート(高度を上げない谷底ルート)を選択、2日分の行程を1日に短縮しています。そのようなハプニングはありつつも、ゴール地点のツェルマットでは、このロングトレイル期間中に親交を深めた仲間達と喜びを分かち合いました。

図表1:行程表

日数行程距離登り下り時間
1日目ChamonixArgentiere8km416m232m4h
2日目ArgentiereTrient17km1,478m1,176m7h
3日目TrientSembrancher26km1,058m1,903m10h
4日目SembrancherCab du Mont Fort15km1,740m100m8h
5日目Cab du Mont FortCab. de prafleuri15km1,487m1,257m8h
6日目Cab. de prafleuriArolla20km1,110m1,822m10h
7日目ArollaLa Sage10km365m853m5h
8日目La Sage – Cabane de Moiry12km1,881m624m6h
9日目Cabane de Moiry – Mission20km462m2,100m7h
10日目Mission – Gruben19km1,679m1,190m10h
11日目Gruben – Grachen21km1,759m2,113m12h
12日目Grachen – Zermatt24km670m540m7h
合計 207km14,105m13,910m94h

 

序盤~シャモニー発、モンブラン山群の絶景を望む

トレイル序盤は、比較的緩やかな上り下りが続きます。まずモンブランの麓町フランス・シャモニーを北西に向かって出発、最初の難所でスキー場としても有名なバルム峠(標高2,204m)を越えてスイス領に入ります。そこからフォルクラ峠や湖畔の町シャンペを経由しつつ谷間を進み、最後は本格的な山登りに突入、1,700mほど高度を上げて氷河近くのモンフォール(Mont Fort、標高2,457m)小屋を目指します。

序盤の見所は、行程と共に変化していくモンブラン山群の絶景です。出発時に麓から眺めた大きなモンブランが、先に進むにつれて見える角度・山容を変えながら徐々に小さくなり、序盤最後にはグランジョラスなどと共に雄大な一連の山塊となって素晴らしい絶景が望めます。

またロングトレイルならでは感動もあります。ロングトレイルでは、峠を越えて谷を進み、再び次の峠へ登る、これを繰り返しながら先へ進みます。山間の道を進むため、踏破してきた行程を振り返る機会は然程ありませんが、4日目終盤のモンフォール小屋へ続く見晴らしの良いトラバース道からは、3日目、4日目に歩いてきた道のりが一望出来ます。過去の歩みが一本の線で今へと繋がる感覚、これが得も言われぬ感動でした。

中盤~ハイライト「氷河渡り」と絶壁に設置された「3段垂直梯子登り」

中盤は、荒々しい大自然が剥きだしとなる高所帯を進みます。モンフォール小屋を出発後、ガレ場や雪渓の入り混じった起伏の激しい氷河地形(モレーン)の中を進み、最高点プラフルーリ峠(標高2,965m)を越えてプラフルーリ小屋へ。一度ディス(Dix)湖畔へ下った後、再び高度を上げてシェイロン氷河へ向かいます。ここから最大の難所に突入、まず氷河の上を歩いて横断、続いて絶壁に設置された3段の垂直梯子を登ってシェーブル峠(標高2,855m)を越えます。

峠越えの後はアローラの町(標高2,006m)まで下ります。「青の湖(Lac Bleu)」として知られる絶景ポイントなどに立ち寄りつつ穏やかなアローラ谷を進んだ後、再び1,000mほど高度を上げてツァテ峠(Tasté、標高2,868m)を越えます。最後は氷河地形の中を進み、モアリ(Moiry)氷河が眼前に迫るモアリ小屋(標高2,825m)を目指します。

中盤の見所は、オートルートのハイライトである「氷河渡り」とその後の「3段垂直梯子登り」です。氷河の上には比較的歩き易く安全な場所にルートがあり、分かり易い目印も設置されています。但し、氷河の状況(クレパスや氷河上の水流等)は変化しますので、入念なご準備を!絶壁に設置された梯子は、丁度新しい梯子に取り替えられていましたが、錆びた古い梯子が高度感・緊張感を高めてくれます。全長65フィート(20メートル程度)ですが、3つの梯子の間にはトラバースする箇所があり、実物以上に長さを感じます。

終盤~連日の峠越えをクリア、マッターホルンがゴールを祝福

終盤は、高低差のある峠越えが連続します。モアリ小屋を出発、緩やかにモアリ湖畔へと下った後、ソラボワ峠(Sorebois、標高2,847m)を越えてジナル谷に下ります(標高1,675m)。続いて絶景ホテルとして人気の高いホテル・ヴァイスホルンの脇を抜けてマイト峠(Meidpass、標高2,790m)を越えた後、トゥルトマンのグルーベンへと下ります(標高1,822m)。

ここから再び高度をあげて最後の難所アウグストボード峠(Augstbordpass、標高2,844m)を越えると、いよいよゴール地点ツェルマットのあるマッター谷となります。鉄道駅ザンクト・ニコラス(標高1,127m)まで下った後、最後は谷間を通る線路と並行しながらツェルマットを目指します。

終盤の見所は、何といってもマッターホルン。連日の峠越えにより疲労もピークとなる中、ツェルマットに近づき、その特異な山容が見えた時には、「ついにゴール地点まで来た!」という感慨が自然と込み上げてきます。これこそロングトレイルの醍醐味ですね。山小屋やトレイル中に知り合った仲間達とも、最後は笑顔で一緒にゴール、お互いの健闘を称えあいました。

宿泊事情:キャンプ場でのテント泊と山小屋利用

今回の計画では、ルート上にキャンプ場がある時はテント泊、無い時は山小屋を利用しました。宿泊数はほぼ半々でした。

キャンプ場ではトイレ、シャワー、水道等が利用出来ます。事前予約は不要で(不可の先が多い)、指定されたエリア内の好きな場所にテントを張ります(到着順)。山小屋の庭・周囲をキャンプ場としていた先もありました。キャンプ場の情報はネット検索するのが難しく、情報収集に苦労しました。上述ガイドブックや地図に記載されている情報を頼りにしましたが、廃業していた先もありました。食料・ガス缶等の調達も苦労しますので、チャレンジされる際は入念な準備が必要です。

一方、山小屋ではベッド、夕・朝食、シャワー等を利用出来ます(ランチセットのオーダーも可)。今回のルートは人気の高いトレイルが重なる場所のため、充実した設備の山小屋が多かった印象です。個室有の先も多いですが、シーズン時はまず空きがなく、ドミトリーを利用しました。もちろん、ドミトリーでも予約必須です。

アルプスの動植物

動物編

アルプスの山中では、多くの野生動物に出会えます。アルペン・マーモット、アイベック、シャモアなどが代表例で、時間帯としては早朝に出会う機会が多かったです。

また立派なカウベル(大きな鈴)をつけて放牧されている牛達がトレイル上に立ち塞がっていたり、ヴァレー地方原産の珍しい羊、ヴァレー・ブラックノーズが放牧されていたりと、多様な動物と出会うことが出来ます。

植物編

美しい花々を楽しむことが出来るのもアルプスの魅力。本当に癒されます。

次回は個別編となります。

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