【TJR概要編】ツール・ド・ユングフラウ / Tour of Jungfrau Region-ロングトレイル

ツール・ド・ユングフラウ

ヨーロッパアルプスの中央、スイスのベルン州オーバーラント地方にあるユングフラウ山地を10日前後で一周する約120㎞のロングトレイル、ツール・ド・ユングフラウ(Tour of Jungfrau Region)。アイガー、メンヒ、ユングフラウ(オーバーラント三山)などの名峰群をはじめ、氷河地形が作り出す名瀑や映画007のロケ地となったシルトホルン展望台、スリル満点のリッジウォーク、アイガー北壁直下のルートなどバラエティ豊かな絶景コースを満喫出来ます。今回は概要編です。

ツール・ド・ユングフラウ(Tour of Jungfrau Region) とは 

トレイル概要

ツール・ド・ユングフラウ(Tour of Jungfrau Region)とは、ヨーロッパアルプスの中央に位置するユングフラウ山地を一周する約120kmのロングトレイルです。

このトレイルでは、アイガー、メンヒ、ユングフラウ(オーバーラント三山)などアルプスを代表する名峰群を様々な角度から楽しめるほか、アルプス三大北壁の1つとして名高いアイガー北壁直下をトラバースします。

また映画007のロケ地となったシルトホルン展望台(標高2,970m)への登頂や、左右両方が切れ落ちたスリル満点の稜線(ナイフリッジ)歩き、間近に迫る雄大な氷河の絶景などアルプスの大自然を存分に満喫できます。なお、一部の区間については公共交通機関を利用することで、グリンデルワルドなどの山岳リゾートから日帰りハイキングも可能です。

コースの標高は1,300~3,000m弱の範囲で上り・下りを繰り返します(出発地点600m弱、最高地点シルトホルン山頂)。全行程の踏破には、脚力等にもよりますが一般に10日前後とされており、コース沿いに点在する山小屋やホテル等を利用します。今回はヴィルダースヴィルをスタート地点とし、グリンデルワルドやシルトホルンを巡ってヴィルダースヴィルへと戻るコースです。

ユングフラウ地域とハイキングの歴史

アルプス最高峰モン・ブランの初登攀成功(1786年)を契機にスポーツ登山の人気が高まる中、19世紀には英国人を中心に高度な登山技術が必要な数々のアルプス高峰への初登攀が相次ぎ、アルピニズムは黄金期を迎えます。中心拠点となったユングフラウ地域では、1887年にツール・ド・ユングフラウの出発点ヴィルダースヴィルから山頂への登山鉄道が開通、1929年には山頂駅にスイス初の森林限界より高所の高山植物園が開園したりと、山岳リゾートの先駆けとして発展しました。

また、19世紀末~20世紀初頭にはユングフラウ鉄道も建設されました。アイガー、メンヒの山中を貫くトンネルを通ってヨーロッパ最高所(標高3,454m)のユングフラウヨッホ駅へと登ります。山頂駅からは、アルプス最大・最長のアレッチ氷河を一望出来ます。2021年には「アイガー・エクスプレス」と呼ばれるゴンドラも開通、グリンデルワルトの町からアイガー北壁直下を高速で結び、最新の観光スポットとして人気を博しています。

ユングフラウ地域は、ハイキングコースや宿泊施設、公共交通機関など山岳リゾートに不可欠なインフラも充実しています。このためアルプス高峰の登攀にチャレンジするアルピニストから、アルプスの名峰や氷河などを間近に体感・満喫したい観光客・ハイカーまで、老若男女を問わず幅広い層が訪れます。ツール・ド・ユングフラウでは、こうしたユングフラウ地域の魅力を存分に楽しむことができます。

ガイドブック

ツール・ド・ユングフラウを紹介しているガイドブックは以下の本(英語)です。このシリーズはこれまで踏破したロングトレイルでも毎回利用しており、ルート検討に必要な情報が網羅されています。現地の山小屋でもこの本の読者を見かけました。もっとも、今回はシリーズ他作品と比べるとやや情報量が少ないかもしれません。現地ではこの本とともに、詳細地図を活用しました。

ガイドブックでは、 一周約120kmのトレイルがベースとなり、これに絶景の氷河を間近に見ることができるオプション・コースや悪天候時の回避ルート、公共交通機関を利用するルートなどが掲載されています。

Tour of the Jungfrau Region ペーパーバック – 2018/6/30

ツール・ド・ユングフラウを紹介しているガイドブック(英語)

コース日程

実際に踏破したコース日程は全10日間、総距離はオプション・コースへの寄り道分も含めて160km(100マイル)でした(図表1参照)。ガイドブックではスタート地点を鉄道山頂駅シニゲ・プラッテ、ゴール地点を麓町ヴィルダースヴィル(総距離120km)としていますが、今回はスタート、ゴール地点ともにヴィルダースヴィルに設定し、完全踏破にチャレンジしています。

宿泊先については、全泊個室を利用しました。ドミトリーであれば、ルート上の山小屋を利用できるため日々の行程も比較的抑えられますが、今回は個室確保を条件としたため、やや負荷の大きい日もありました。それでは今回のトレイル概要について、ハイライトをご紹介します。

図表1:行程表

日数 行程 距離 登り 下り 時間
1日目 Wilderswil – Schynige Platte 8.5km 1428m 31m 4.5h
2日目 Schynige Platte – First 17km 905m 722m 7.5h
3日目 First – Grindelwald 18km 759m 1,728m 7.5h
4日目 Grindelwald (Beghaus Bäregg) 13km 853m 964m 5h
5日目 Grindelwald – Kline Scheidegg 17.5km 1,665m 549m 8h
6日目 Kline Scheidegg – Stechelberg 18.5km 779m 1,848m 6h
7日目 Stechelberg – Tschingelhorn 16km 1,014m 564m 7h
8日目 Tschingelhorn – Rotstockhütte 11km 1,079m 735m 5h
9日目 Rotstockhütte – Mürren 13km 987m 1,374m 6.5h
10日目 Mürren – Wilderswil 27.5km 1,014m 1,984m 9h
合計   160km 10,768m 10,499m 66h

 序盤~オーバーラント三山が望める絶景コース

トレイルはインターラーケンの隣町ヴィルダーズヴィルからスタートします。町外れの教会脇から登山道へと入り、標高1,980mのシニゲ・プラッテ鉄道山頂駅まで標高差約1,400mを一気に登ります。途中、レトロな雰囲気の鉄道車両と度々遭遇、中間駅では登りと下りの車両が行き交うので写真撮影をかねて休憩(その他の区間は単線)。山頂駅に到着後、上述の高山植物園に立ち寄りました。

さて、トレイル序盤の絶景コースはここからが本番。ルートは森林限界を越えた見晴らしの良いリッジウォークとなり、オーバーラント三山をはじめユングフラウ山地の美しい山並や氷河の絶景を見ながらゴンドラ駅のあるフィルストを目指します。この人気コースは公共交通機関を利用すれば日帰りハイキングも可能です。なお、この日は午後から天気が崩れアルプバッハ湖に映る逆さ三山はお預けでした。

翌朝のフィルストでは、進行方向の峠・グローシェ・シャイデックからグリンデルワルドの町へと流れ込む滝雲が発生。神秘的な光景に圧倒されながら、人気の絶景コースを進みます。グローシェ・シャイデックに到着後、今度は左手に高峰ヴェターホルンを見ながらグリンデルワルドの町へ下ります。

中盤~オーバーラント三山の険しい岩壁に最接近

中盤ではオーバーラント三山に最接近し、荒々しい岩壁の直下を進みます。そのまえに、人気の絶景スポットへ寄り道すべく、正規ルートを一旦外れてグリンデルワルトからシュレックホルン中腹にあるベーレック小屋を目指します。アイガー東壁を間近に見ながら小屋まで登ると、人気のテラス席からは眼前に迫る大迫力の氷河を一望出来ます。

再び正規ルートに戻り、有名なアイガー北壁の直下をトラバースする「アイガー・トレイル」を進みます。アイガーの険しい岩肌を見上げつつ高所帯を進んでいくと展望台に到着。ここからアイガー北壁登攀ルートの最難関と呼ばれた氷の塊「白い蜘蛛」も確認できます。そしてルートはゴンドラの開通で賑わうアイガーグレッチャー駅の脇を抜けて、クライネ・シャイディックへと下ります。

今度は世界遺産エリアに設けられた「ユネスコ・トレイル」を進みます。アイガーの隣に鎮座するメンヒ、ユングフラウを左手に眺めつつ、標高差約1,800mを一気に下ってブルーネン谷を目指します。有名なトリュメンバッハ滝のすぐ近くを通って谷底まで下ると、数百メートルはある断崖の遥か上空から流れ落ちる美しい滝を何本も見ることができます。

終盤~ブルーネン谷を経てシルトホルン登頂へ

終盤ではオーバーラント三山を離れて、まずはブルーネン谷の最深部に位置するブライトホルン、チンゲルホルンへ向かいます。ルートは両ホルンの中腹を進んでいくため、両ホルンの美しい姿は勿論、前面に拡がる雄大な氷河や氷河水が作り出す迫力満点の巨大な滝なども楽しめます。また、この辺りは特に人里離れた場所になるため、アルプスの大自然を十二分に満喫出来ます。

続いて終盤の山場、シルトホルン山登頂に挑みます。標高2,970mの山頂は今回のトレイルにおける最高地点。ルートは西稜から登頂し、東稜を伝って山岳リゾートの町ミューレンへと下ります。特に険しいルートが西稜側で、左右が切れ落ちたナイフリッジの上を進んでいくと、鎖場や梯子、滑落防止用の鉄杭が整備された箇所が続きます。ルート自体はよく整備してありますが、天候には注意が必要です。

ミューレンからは、上り下りを繰り返しながら幾つもの谷を越えて、徐々に高度を下げていきます。この辺りでは放牧が盛んで、牛の群れと度々すれ違ったり、チーズの無人販売なども沢山見かけました。最後は森林コースを進み、スタート地点のヴィルダースヴィルへ。長かったトレイルもこれでゴールとなります。

宿泊事情:ホテル・山小屋の個室利用

今回は宿泊先を選ぶにあたり、個室確保を条件としました。この結果、宿泊先は山岳ホテルやゴンドラ駅に併設された山小屋、農家が経営する山小屋などで、従来利用していたドミトリー型の山小屋は断念。予約は全てネットまたはメールで完了。数年前では「予約は電話のみ」という先もありましたが、今では予約も、とても便利になりました。

山小屋ではベッドと食事(夕・朝食、ランチパックも可)が提供されます。大半の宿ではシャワーや充電なども利用できますが、例外もあるのでご注意下さい。なお、個室が離れになっており、食事を部屋まで運んでくれる先もありました。大自然の絶景を見ながら個室での食事、とても優雅な一時でした。

アルプスの動植物

動物編

アルプスの山中では、多くの野生動物に出会えます。アルペン・マーモット、シャモアなどが代表例ですが、今回はキツネやオコジョにも出会いました。放牧地では、立派なカウベル(大きな鈴)をぶら下げた牛達がトレイル上に立ち塞がっていたり、放牧犬に追い立てられて牛舎に帰っていく光景も目にしました。

植物編

美しい花々を楽しむことが出来るのもアルプスの魅力です。トレイル序盤で立ち寄った高山植物園では、アルプスの代表的な花々を学習できたので、その後のトレイルがより一層楽しめました。

概要編はここまでです。次回は各日程編をお届けしたいと思います。

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