【HR11】オート・ルート/モンブランからマッターホルン~ロングトレイル11日目

オート・ルート(シャモニー~ツェルマット)

ヨーロッパ・アルプスを代表する二つの名峰モンブランとマッターホルン、この麓町(フランス・シャモニー、スイス・ツェルマット)を繋ぐ約180kmのロングトレイル、オート・ルート(Haute Route)。HR11日目は、グルーベンからグラッヒェンまでの21km(登り1,759m、下り2,113m)、約12時間の行程です。

アウグストボード峠

グルーベン出発

オート・ルートもついに大詰め。本日の難所アウグストボード峠(Augstbordpass、標高2,894m)を越えてザンクト・ニコラス(St. Niklaus、標高1,127m)へと下れば、このロングトレイルのゴール地点であるマッターホルンの麓町ツェルマットがあるマッター谷(Mattertal)です。

本日の行程は、ガイドブックではザンクト・ニコラスまでですが、キャンプ場の関係で今日はさらに足を延ばしてグラッヒェン(Grachen、標高1,615m)まで進みます。上り下りに加えて総距離もある一日なので、今朝は5時40分に宿を出発。周囲はまだ暗いので、ヘッドライトを点けて進みます。

谷底の集落グルーベン(Gruben、標高1,825m)を後にして、ルートは林間コースへ入ります。ジグザグ道が続き、高度を一気に上げていきます。辺りが徐々に明るくなってきましたが、残念ながら天候は本日も曇りがち。ルートは完全に霧で覆われています。

グローベ・オーバースタフェル

出発してから1時間20分程で、牛飼い小屋のあるグルーベ・オーバースタフェル(Gruobu Overstafel、標高2,369m)まで登ってきました。周囲は相変わらず霧で覆われ、雄大な景色は望めません。そんな中でも、足元にはアルプスの高山植物が咲いています。綿毛の先には水滴がつき、上手に霧から水を吸収しています。

さらに登っていくと、雲の切れ間に出たのか、少しだけ視界が開けてきました。森林限界を超えているので木々はなく、草地の大地が拡がります。放牧が行われるこの辺りは、斜度も緩く歩き易い道です。

アウグストボード峠越え

その後も頻繁に霧が立ち込めてきますが、ルートは分かり易く迷うことはありません。峠が近づいてくると、斜度は徐々にきつくなります。見晴らしの良い場所へ出ました。標高の高いこの辺りでは、雪渓もまだ多く残っています。

そしてそれらの雪解け水が集まって出来た池があります。ガイドブックに載っている絶景ポイントですが、霧で覆われ期待していた絶景は次回にお預け。池を超えると、いよいよ峠の全容が見えてきました。美しい湾曲の中心部にある場所が峠です。足元は霧で濡れた岩場なので滑り易く、慎重に進んでいきます。

そして出発後、2時間50分でアウグストボード峠に到着(標高2,894m)。ちょうど1,000m程登りましたが、今回は霧のため途中の絶景が望めず、黙々と登るトレッキングとなりました。ロングトレイルなので、こういう日もあると割り切り、先へ進みます。

ユンゲン

アウグストボード峠からの下り

峠は完全に霧の中で、下りのルートは少し先までしか見えません。まずは峠付近のジグザグ道を下っていきます。すると一瞬雲の切れ間となったので、慌てて振り返り、峠を撮影。そして、1分も経たないうちにルートは再び霧に覆われ、視界不良の状態に逆戻り。

ユンゲンへの下り

峠を後にして、次の目的地ユンゲン(Jungen、標高1,955m)を目指します。30分程下ってくると、再び霧が晴れました。今度は先程よりもはっきりと峠が見えます。岩場の急坂を降りて来たのがよく分かります。そして、ルートは岩場と草地が入り混じった中を進んでいきます。

途中、道幅の細い箇所をトラバースしながら進みますが、霧で視界が悪いせいか、それほど怖さはありません。さらに進んでいくと、霧が一段と濃くなり、視界は手前数メートルしか見えなくなりました。霧との戦いがこの後も続き、本来は絶景コースとのことでしたが全く満喫出来ず、休憩含めて3時間半程でユンゲンに到着。

ユンゲン

ユンゲンはさらに濃い霧の中。池があり、その周りにはバーベキュー施設も設置されているなど、天気が良ければ、絶好のピクニック・スポットです。ユンゲンには、麓町ザンクト・ニコラスからケーブルカーが出ているので、これを利用して遊びに来る観光客が多いようです。

もっとも、この日は観光客をほとんど見かけず、レストランが唯一営業中。石造りの伝統的な家屋が立ち並び、雰囲気の良さそうな場所ですが、今日は視界が悪いので、先へ進むことにします。次の目的地ザンクト・ニコラスを目指して、ここから800m程下ります。

ザンクト・ニコラス

ザンクト・ニコラスへの下り

森林限界の下まで降りてくると、先程までとは打って変わり天候が回復、ようやく青空が出てきました。ザンクト・ニコラスまでは結構な急坂を下っていきますが、晴れていると心も弾み、ハイキング本来の楽しみを満喫出来ます。

そしてついにマッター谷が姿を現しました。この谷の奥が、本ロングトレイルのゴール、ツェルマットの町です。ここからでは、まだマッターホルンが望めませんが、山の裏手にそびえる名峰を思わず想像してしまいます。そうこうしている間に、谷底の町ザンクト・ニコラスが見えてきました。

ザンクト・ニコラス

ザンクト・ニコラスに到着。ここは鉄道駅もある大きな町。リュックの中の食料も残りわずかになっていたので、まずはスーパーに立ち寄り買い出しです。久しぶりのスーパーなので、ついつい買い込んでしまいました。また見慣れた顔のハイカーも続々と到着、お互いの健闘を称えあいつつ、明日のルートを確認し合いますが、明日の予定していたルートは一部崖崩れで迂回の指示が出ており、更に天候も良くないようです。

町のインフォメーション・センターを訪れ、明日の天気を再度確認。どうやら、高所は殊更天気が悪い模様で、吹雪に雷と、嵐になるような予報です。明日は、本来ヨーロッパ・ウェグ(Europaweg)と呼ばれる絶景の高所ルートを通り、高所の山小屋で一泊して、ツェルマットを目指す予定でしたが、急遽この計画を断念。予約していた山小屋の取消連絡をし、天気が良い谷底のルートを進むことにしました。

もっとも、今日の宿泊地は明日の高所ルートを想定し、ここから500m程登ったグラッヒェンのキャンプ場としていました。ルート変更を決めたとはいえ、付近には他にキャンプ場が無いので、宿泊地は当初計画を維持、最後の一登りに向かいます。

(ご参考)ヨーロッパ・ウェグ:【TMR3】ツール・ド・モンテローザ~ロングトレイル3日目

宿泊地グラッヒェン

グラッヒェンへの登り

登りになった途端、先程買い込んだ食料の重さが堪えます。また明朝、同じルートを下ってくることを思うと、荷物を途中に置いておく、という案も浮かびますが、とにかく先へと進みます。そんな折、放牧されたヤギが眼前に登場。フェンス越しですが、しばし戯れてリフレッシュします。

高度も徐々に上がり、マッター谷を再び一望出来る高さまで来ました。伝統的な家屋が立ち並ぶ中を抜けて、さらに高度を上げていくとグラッヒェンの集落に到着です。

キャンプ場

今日の宿泊地はグラッヒェンのキャンプ場。グラッヒェンからは迫力のある氷河が望め、そんな場所での久しぶりのキャンプ泊です。テントを立て終えてから、グラッヒェンの中心部へお散歩に出かけます。持ち歩いてきたガス缶の残りが僅かなので、ガスを求めてお店を回りますが、ガス缶の口径部が異なる仕様のものしかなく、この日はガスの使用を断念。豪勢な夕飯は明日にお預けとなりました。今回はここまで。

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