ヨーロッパ・アルプスを代表する二つの名峰モンブランとマッターホルン、この麓町(フランス・シャモニー、スイス・ツェルマット)を繋ぐ約180kmのロングトレイル、オート・ルート(Haute Route)。HR3日目は、フォルクラ峠からサンブランシェ(Sembrancher)までの26km(登り1,058m、下り1,903m)、約10時間の行程です。
フォルクラ峠出発
日の出前に起床、天気は回復傾向にあるようで雨も降っていません。夜露で濡れたテントを畳んで出発準備に取り掛かります。出発頃には朝焼けが見えてきました。近所の牛達は既に牛舎から草原へと出勤しています。
お世話になったホテルに別れを告げて早速出発(標高1,527m)、道路脇からルートに入ります。今からまず湖畔の町シャンペ(Champex)を目指しますが、ガイドブックには2通りのルートが掲載されています。本日の行程は、シャンペから更に先へ進む計画なので、距離の短いルートを選択しました。
Alp Bovineへ
中間地点La Giete
今朝は林間コースの登りからスタート。ここは、ツール・ド・モンブランの際に逆回りで踏破した思い出のルート。前回とは見える方向・景色が異なるものの、当時の記憶が随所に蘇ってきます。そして朝焼けは一段と輝きを増してきました。
朝焼けが終わり、木々の合間からは眼下の地形が見えます。フォルクラ峠から1時間半ほど進むと、草地が拡がるLa Giete(標高1,884m)に到着。この場所では放牧も行われている様です。一登りを終えたので、ここで朝食を取ります。
トレイルを再開、一気に視界が開けました。眼下にはRhone谷が拡がり、その先の山塊も見えます。さて、ルートはもうしばらく登りが続きます。最高地点2,040mの場所まで来ると最初の目的地Alp Bovineが見えました。
Alp Bovine
Alp Bovine(標高1,987m)には牛飼いの小屋があり、放牧が行われています。ここは見晴らしが良く、朝露に濡れた緑の草地が太陽の光を受けて輝いていました。ふとルート脇に目を転じると、キャンプ泊をしている家族と目が合い、気持ち良く朝の挨拶を交わします。
天気も回復に転じ、ようやくアルプスのロングトレイルらしい光景になってきました。初日、二日目と天候が今一つでしたので、写真撮影にも熱が入ります。まだ靄が少し掛かっていますが、行く手の先には氷河を纏った雄大なグラン・コンパン(Grand Combin)が望めます。またRhone谷方向を見ると、白い雲が山と上手く重なり、まるで雪に覆われているようです。
シャンぺ
林間コースを抜けてシャンペへ
絶景を楽しみながらAlp Bovine小屋の脇を過ぎてしばらく進むと、ルートは右に大きく曲がり、見える景色も一変します。この辺りからはなだらかな下りが続きます。牛も通るルートをしばらく進んでいくと、巨岩がゴロゴロ転がっている沢が出てきます。大雨の時には危なそうです。
ルートはその後林間コースへと入ります。見覚えのある地形を発見。ツール・ド・モンブランを踏破した際に、昼食休憩をした場所です。懐かしさもあり、暫しの休憩を取りました。さらに下っていくと、農家小屋に到着。この脇の道路を進み、湖のある町シャンペを目指します。
シャンペ
出発から約6時間でシャンペ(標高1,466m)の町に到着。こじんまりとした雰囲気の良い町です。美しい湖があり、水中にはニジマスに似た魚が泳いでいます。キャンプ場もあるようですが、今日はさらに先を目指して進みます。
その前に、スーパーとパン屋へ立ち寄り食材を補充。これでリュックは再び重くなりました。湖畔のベンチでランチ休憩を取り、午後のルートを確認します。一抹の不安は、この日の宿泊地として予定しているキャンプ場の情報が乏しいこと。地図上ではキャンプ地のマークが付いているのですが…。
サンブランシェへ(Sembrancher)
Soulalex村へ
シャンペから本日の宿泊地サンブランシェ(Sembrancher、標高717m)までは、比較的まっすぐな下りが続きます。視界の開けた場所が多く、牧歌的な景色を見ながらのんびりと進んでいくと、ルート直下にChez Les Reuse村(標高1,158m)が見えてきました。この集落には立ち寄らず、ルートを直進します。
谷の斜面をトラバースするようにしてルートは続きます。美しい緑の牧草地を見ながら進んでいくと、次はSoulalex村(標高1,032m)に到着。今度は村の中を通ります。村の水場でアルプスの天然水をふんだんに補給。一息入れてから、細い路地を縫うようにしてルートは続きます。
La Garde村へ
Soulalex村を後にして、さらに下ります。目的地サンブランシェもだいぶ近づいてきました。そしてその手前に位置するLa Garde村(標高900m)へ到着。村の礼拝堂で旅の無事をお祈りしてから、村の中を進みます。シャンペからここまで約2時間(休憩込)、この村を過ぎるといよいよゴール目前です。
宿泊地サンブランシェ
ついにサンブランシェに到着。と、ここまでは良かったのですが、キャンプ場に関する情報がありません。情報は地図に記載されたマークのみ。まずは近いほうのキャンプ場がある場所へ行ってみますが、看板なども無く。。。どうも廃業されたようです。
途方に暮れていると、ルート脇に偶然居合わせた老婦人が「うちの庭でキャンプしても良いですよ」と親切に声をかけてくれました。大変有難いオファーでしたが、キャンプ場はもう1軒あるので、丁寧にお断りした上で、次の場所へと向かいます。
今度もキャンプ場の看板が無く、地図の場所にある小売店で聞いてみると、何とこちらも廃業したとのこと。次の町へと進むか思案し始めた矢先に、その店主から有難いオファーが。空いてる場所でテントを張ってOK、かつシャワーも使用可、と。救われました!閉店間際だったので、急いでバゲットを購入。非常にピンチな状況でしたが、優しい人々に助けて頂きました。今回はここまで。
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