【HR5】オート・ルート/モンブランからマッターホルン~ロングトレイル5日目

オート・ルート(シャモニー~ツェルマット)

ヨーロッパ・アルプスを代表する二つの名峰モンブランとマッターホルン、この麓町(フランス・シャモニー、スイス・ツェルマット)を繋ぐ約180kmのロングトレイル、オート・ルート(Haute Route)。HR5日目は、モン・フォール小屋からプラフルーリ小屋までの15km(登り1,487m、下り1,257m)、約8時間の行程です。今日は3つの峠(最高地点2,965m)を越えます。

モン・フォール小屋出発

絶景の朝焼け

HR5日目は、上り下りを繰り返しながら3つの峠を越えていくタフな一日。早朝に出発すべく、今朝は5時に起床。周囲がまだ寝静まる中、静かに準備を整えてモンフォール小屋を出ます。テント泊と違い、身支度も簡単です。

外は快晴、そして小屋のテラスからは息を呑むような絶景が!朝焼けに赤く染まるモンブラン山脈、モルゲン・ロートです。グランド・ジョラスやモンブラン山頂まで綺麗に一望出来ます。ヨーロッパ・アルプスならではの景色に感動するとともに、スタート地点から大分進んできたことを実感します。

朝の素晴らしいご褒美を十分満喫した後、今日のトレイルを開始します。モンフォール小屋(標高2,457m)は高台にあるので、まずはこれを下ります。そして斜面をトラバースするように作られたルートを緩やかに登っていきます。

尾根での折り返し

気分よく出発したものの、この辺りは絶景ポイントが続くのでペースが一向に上がりません。背後のモンブラン山脈は太陽を浴びて一段と明るく輝いています。またこれまで踏破して来たルートも一望できるうえ、その先には名峰ダン・デュ・ミディも見えています。

前方には巨大な氷河を抱いたグラン・コンバンが姿を見せ、撮影にも更に熱が入ります。澄み渡る青空の下、万年雪を纏い堂々とした山容に不思議と魅せられてしまいます。山頂直下から流れ出るコルバシエール氷河も雄大です。

さてルートはこれまで草地主体でしたが、徐々にガレ場が多くなり、高度感も出てきました。ようやく尾根に差し掛かり、ここからまた見える景色が変わります。

テルマン峠越え

シャモア道~動物編

尾根で折り返すと、ここからはシャモア道(Sentier des Chamois)と名付けられたルートに入ります。シャモアとの遭遇を期待しつつも、途中には「崖崩れ注意」を促す看板があるほか、ルートもガレ場主体となり、周囲に気を配りつつ慎重に進んでいきます。

すると、シャモア(独:ガムセ)の群れが登場!お母さんの後をまだ幼い数匹の子供が追いかけていきます。かなりの急坂ですが、いとも簡単そうに駆け上がります。貴重な出会いに感謝しつつ、先へと進みます。

続いて今度はマーモットの登場。この辺りの斜面にはマーモットが沢山住んでいる様で、所々で姿を見せてくれます。そして最後は立派な角を持ったアイベックス(独:シュタインボック)が登場。非常に勇ましい雄姿を見せてくれました。

シャモア道~植物編

シャモア道でのお楽しみは動物鑑賞だけではありません。周囲には彼らが食べる草地が拡がっていますが、そこにはアルプスの美しい花々も咲いています。一面のお花畑、これも見所の一つです。

テルマン峠

ルートはグラン・コンパンを正面に見ながら、緩やかな上り坂が続きます。どんどん迫ってくるグラン・コンパンの山容と、次から次へと登場する動植物を満喫しながら進んでいくと、最初の峠、テルマン峠(Col Termin、標高2,648m)に到着です。

出発してから約2時間半、ここで朝食休憩にします。コーヒーを沸かしてくつろいでいると、見覚えのあるハイカー達が到着。昨晩の山小屋で一緒だった人達です。朝一番に山小屋を出発したものの、快晴下での絶景や動植物の撮影に夢中で、ペースが遅かったようです。

朝食をのんびり取った後、次のルヴィエ峠に向けてトレイル再開です。少し進んで振り返ると、何とも恰好の良い峠が望めます。遠くにはグラン・コンパン、そして眼下にはルヴィエ湖(Lac de Lovie)が綺麗に見えます。美しい絶景に感動しつつ、気持ちの良いトレッキングが続きます。

ルヴィエ峠越え

ルヴィエ峠越え~前半

緩やかな下り坂の先にはルヴィエ峠が見えてきます。先に進んでいくと、眼下に見えるルヴィエ湖へと続くルートとの分岐点に到着、湖方面から登ってきたハイカーもいます。この先には鎖・ロープが張られた難所があり、先行者も慎重に進んでいます。

峠が近づくにつれて足元はガレ場となり、登りの斜度もきつくなります。本格的な急登が始まり、黙々と登っていくと、ルート脇に周辺の雪渓から溶け出した小川を発見。今日のルートはこの先いつ水を補充出来るか分からないので、ボトルに水をしっかりと補充しておきます。

ルヴィエ峠越え~後半

水分補給を終えて急登再開。すると、今度は先程見かけたアイベックスの群れを発見。何と彼らもこの水場に水分補給へ来ています。立派な角が印象的です。野生のアイベックスやシャモアをこれほど間近で何度も見たのは今回が初です。

岩場のルートを更に登っていくと、ようやくルヴィエ峠(Col de Louvie、標高2,921m)に到着。テルマン峠からは2時間強です。振り返ると、モンブラン山脈がまだ見えます。付近の景色はこれまでと異なり、荒涼とした大地という感じです。

次は最後の峠、プラフルーリ峠を目指します。峠の標識によるとここから約2時間ですが、これまでの峠越えで疲労も大分溜まり、お腹もすいてきたので、もう少し進んでからランチ休憩とします。目標はこの先にある湖畔です。

プルフルーリ峠越え

グランデゼール氷河とその湖

ルヴィエ峠を越えると風景が完全に一変し、モレーン(氷河地形)に入ります。灰色の砂利・礫の大地が拡がり、小さな湖が点在、そして現役の氷河。もっとも、氷河と言っても大規模なものではなく、一見するとただの雪渓のようですが、よく見みると青い氷の層が下にあるような小さなものです。

周囲の湖は氷河水特有の白濁したエメラルド色。普段まず目にすることの無いモレーンならではの荒涼とした地形の中を進んでいくと、まるで違う惑星にいるかのような不思議な感覚を覚えます。ルート自体は分かり易くマーキングされているので、迷うことは無そうです。

峠から1時間強進むと、大きな湖の脇に到着。これはすぐ上に見えるグランデゼール氷河が溶けて出来た氷河湖(Lac du Grand Desert)です。この大迫力の景色の前でランチ休憩とします。氷河が近く気温も低いので、先程汲んだ水を沸かしてスープを作り体を温めます。何とも贅沢で幸せな時間です。

氷河地形を横断

それでは午後の部再開です。天気は雲り模様になってきましたが、まだマーキングされたルートを先の方まで見通せる状態なので、安心感があります。進行右手側にグランデゼール氷河を望みつつ、ゴツゴツした岩場や砂利のルートを進んでいきます。

平地を少し進んで高台へ登る、これを繰り返しながら徐々に高度を上げていきます。高台から振り返ると、今横断して来たグランデゼール氷河を見渡せます。進行左手側には、氷河によって削られた氷河谷が遥か先まで続いています。

荒涼とした大地をどんどん進んでいくと、ルート上には雪渓を越える箇所が何度か登場します。比較的踏み固められているうえ、斜度もきつくないので、怖さは殆ど感じません。これまでにない、独特な氷河地形の景色の中、いよいよ最後の峠越えも終盤戦に入りました。

プラフルーリ峠

雪渓を越えるといよいよ最後の一登り。補給食を頬張りながら登っていきます。そして無事、本日最後の峠、プラフルーリ峠(Col Prafluri、標高2,987m)に到着。振り返ると、踏破して来たルートが良く見えます。これまでの峠越えとは異なる、新鮮な体験を楽しむことが出来ました。

この峠からは、グランデゼール氷河の隣に位置するプラフルーリ氷河を一望出来ます。この先のルートは、この氷河の左側を進んでいきます。今度も岩場の中に雪渓と湖が入り混じる独特の風景ですが、先程と比べると少し緑が見えるので、不思議と安心感があります。

更に前方を望むと、明日横断予定のシェイロン氷河とその峰シェイロン・ド・モン・ブランが見えます。これは本ロングトレイル最大のお楽しみ区間ですが、その前に、まずは本日の宿へ到着するのが最優先。標識によるとここから1時間弱なので、最後まで気を緩めず進みます。

プラフルーリ小屋

プラフルーリ小屋へ

それでは本日の山小屋へ向けて、最後のトレイル再開です。峠から下っていくと、進行右側の上部には先程見たプラフルーリ氷河の先端が見えます。周囲には雪渓がいくつも残っており、大自然の荒々しさを感じます。

そんな中、緑の大地が少し見えたので目をそちらに転じると、なんと再びアイベックスの群れを発見。こんな荒涼とした場所であっても、草地があれば動物もいます。それにしても、今日は本当によく野生動物に出会います。最後の挨拶を交わして、更に下ります。

前方が開けた場所までくると、ついに本日の宿泊地プラフルーリ小屋が見えました。氷河谷の高台部分に建設された山小屋です。山小屋は既に到着したハイカーで賑わっているようです。顔馴染みのハイカーも増えてきたので、再開するのが待ち遠しくなります。

プラフルーリ小屋

砂利道のルートをゆっくりと下り、無事プラフルーリ小屋に到着(標高2,621m)です。今日も山小屋泊なので、テントを設営する手間も無く、のんびりと過ごします。ガイドブックによると、59名の宿泊スペースがある由。

夕飯まではまだ時間があるので、周囲を散策。山小屋からは氷河谷が綺麗に見えます。そして明朝登る峠を確認、いきなりの急登が控えているようです。ルートをイメージしつつ、しっかりと栄養・休息を取ろうと思います。本日はここまで。

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