【HR6】オート・ルート/モンブランからマッターホルン~ロングトレイル6日目

オート・ルート(シャモニー~ツェルマット)
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ヨーロッパ・アルプスを代表する二つの名峰モンブランとマッターホルン、この麓町(フランス・シャモニー、スイス・ツェルマット)を繋ぐ約180kmのロングトレイル、オート・ルート(Haute Route)。HR6日目は、プラフルーリ小屋からアローラまでの20km(登り1,110m、下り1,822m)、約10時間の行程です。今日は氷河を歩いて渡ります。

プラフルーリ小屋出発

ルー峠越え

今日は本ロング・トレイル最大の山場、氷河を渡る区間がある日。不安と期待で胸が躍りますが、その後には垂直の梯子を連続して登る箇所もあるので、慎重を期すべく朝一番に出発します。プラフルーリ小屋の宿泊客がまだ寝静まっている中、静かに準備を整えて小屋を出ます。

朝5時、プラフルーリ小屋(標高2,624m)を出発。外はまだ暗く、ヘッドライトを付けて進みます。昨日、目の前に見えていたルー峠(Col de Roux、標高2,804m)を目指して急峻なジグザグ道を一気に登ります。30分程で峠に到着、残念ながらまだ辺りは暗く景色は望めません。

ルー峠からの景色

ルー峠を下り始めたところで空は徐々に明るくなり始め、眼下には大きな湖、ディックス湖(Lac des Dix)が見えてきました。そしてその先には本日のメインイベント「氷河渡り」の舞台であるシュイロン氷河(Gl. de Cheilon)が見えます。

まずはこれからディックス湖畔へと下り、湖畔手前沿いを奥に向かって進みます。振り返ると、ルー峠の全貌が見えました。暗闇の中、一気に通り過ぎてしまいましたが、急峻なガレ場の登りが印象的な峠でした。今朝のウォーミングアップもこれで完了。

ディックス湖畔

セクレ氷河とディックス湖の朝焼け

湖畔には右側から回り込むようにして下ります。途中、前方正面に雄大なセクレ氷河(Glacier des Ecoulaies)が望めます。まだ早朝なので周囲は静寂に包まれており、ピンと冷たく張り詰めた空気の中、この絶景を独り占め。朝から何とも贅沢な気分です。

湖畔近くまで下ってくると、ようやく空が赤くなり始めました。氷河湖特有の白濁したエメラルド色の湖とうっすらと覆われた雲に朝日が当たり黄金色に染まった空、このコントラストが素晴らしく綺麗でした。

山小屋

続いて山小屋が2軒見えてきました。セクレ小屋(Ref. des Ecoulaies)とバルマ小屋(Ref. la Barma)です。どちらも湖を一望出来る良い場所に建っています。夏の間は時折管理人がいるようですが、食事類の提供は無いので各自が自炊します。立派な避難小屋、という位置づけかもしれません。

湖畔沿いの道

山小屋を過ぎると、ルートは湖畔沿いを進みます。車も通れる道幅ですが、何と正面には立派な角とカウベルをぶら下げた牛が道幅一杯に立ち塞がっています。写真撮影をしましたが、道を譲ってくれる気配が全くないので、諦めて迂回します。

先へ進んでいくと、今度はそこかしこからマーモットが登場。アイベックスの生息地としても有名ですが、今朝は残念ながら発見出来ず。歩き易い道なのでペースも上がり、ついにシュイロン氷河の直下に到着。周囲を見渡すと、辺りは一面の花畑。黄色や白の花々が見事に咲いています。

グランド・ディクセンス・ダム

対岸に目を向けると、もの凄い水量の水が中腹にあるトンネルから噴き出しています。そう、このディックス湖は水力発電用のダムとして利用されています。調べてみると、重力式コンクリートダムとしては世界最大級、ヨーロッパ随一の高さ(285m)を誇ります。

1934年に最初のダムが竣工、その後10年以上かけて1965年に現在の巨大ダムが完成。35カ所の氷河から水を集め、4億立方メートルの水を蓄えています(東京ドーム約323個分)。夏の間だけで、約1万人の見物客が訪れる人気の観光スポットだそうです。確かに尋常ではない迫力です。

さて、湖畔を歩き終える頃には雲も晴れ、絶好のハイキング日和となってきました。お腹もすいたので、ここで朝食を取ります。美しい花畑と豪快なダムを見ながらお湯を沸かして味噌汁を作ります。食後のデザートは羊羹。「氷河渡り」に備えて、一時の幸せを堪能します。

シュイロン氷河を渡る

ディックス小屋付近へ

ディックス湖を後に、ここからいよいよシュイロン氷河を目指します。少し登ると周囲の景色は氷河地形に一変、土砂が堆積して出来た土手の上を進んでいきます。両側が切れ落ちている箇所もありますが、道幅があるせいか高度感は然程なく、絶景の中を気持ち良く登っていきます。

ここで分岐点に到着。天気が良く、気力・体力とも十分なので、当初計画通り氷河を渡るルートを選択。ガレ場の急坂を登っていくと、目の前にはシュイロン氷河が見えてきました。氷河へ降り立つには一度右側から氷河上流部へ回り込み、「シュイロンのモンブラン(Mont Blanc de Cheilon、標高3,870m)」の名称を持つ山の尾根沿いに建つディックス小屋(Cabane des Dix、標高2,928m)付近まで登ります。

小高い岩山の上にディックス小屋が見えました。小屋のすぐ前が氷河です。ここからの景色はまさに絶景。撮影にもつい熱が入り、この場所だけで10枚ほど撮影。一方、ルートは小屋には登らず、その手前を氷河に向かって下ります。

氷河への下り

まずはディックス小屋の近くまで進み、続いてジグザグ道を下ってシュイロン氷河に向かいます。ルートは分かり易いものの、足場はモレーン特有の砂利や礫で崩れ易いので慎重に進みます。目線は足下に集中しますが、顔を上げればシュイロン氷河は目の前。逸る気持ちを抑えて下ります。

氷河の上

なだらかな場所まで下ってきました。足下はまだ砂利や礫、と思いきや、その下には氷の塊が!地表が礫で覆われていたため気付かなかっただけで、既に氷河の上を歩いていました。氷河の上と言っても、歩いている感覚はこれまでと大差なく、氷を見なければ分かりません。

ルートはオレンジ色の目立つインクで分かり易くマーキングされています。なだらかでクレパスの殆どない場所を選んで、ルートが整備されているようです。大地の裂け目のような分かり易いクレパスを遠くから眺めてみると、表面の砂利の下には厚い氷の層が確認できます。

砂利が無く直接氷の上を歩く箇所に来ました。ザクザクとした感触は少し硬くなった雪の上を歩くのと同じようです。また氷河の上を川幅1mほどの小川が流れています。慎重に近づき、マークの付いた大きな石を橋にして渡ります。こうして、氷河の上を対岸に向かってどんどん進んでいきます。

氷河を渡り対岸へ

氷河渡りもいよいよ大詰め。氷河の端と思われる箇所まで到着。これまで特に危険を感じる箇所も無く、順調に進んできました。氷河の上からは、シュイロンのモンブランも良く見えます。ひんやりとした空気が気持ちよく、この絶景に名残惜しさを覚えます。

最後の小川には簡単な木製の橋が架かっていました。これで氷河渡りも無事完了。ここからはこの先のシェーヴル峠を目指して急登が始まります。

アローラへ

シェーヴル峠

氷河を渡り終え、ほっと一息つきたい所ですが、この先には氷河以上に緊張感のある垂直の梯子登りの難所が控えています。近年ルートの改修が行われたようで、梯子も頑丈なものが設置されています。横にはかつて使われていた錆びた梯子も見えます。

一人ずつ登るようですが、幸い他に人はいなかったので、ゆっくり、確実に登っていきます。高度が上がると緊張感は更に高まります。途中、休憩も出来そうですが、ここは一気に登ります。平らな箇所で呼吸を整え、次の梯子に取り掛かります。

梯子を登り終えると、シェーヴル峠に到着(標高2,855m)。渡ってきた氷河と、この先の山々の大パノラマが拡がります。峠の先にはモン・コロンをはじめとする険しい山々が並び、正面奥にはマッターホルンも望めるとガイドブックには書かれていましたが、残念ながら本日は雲で見えず、次回にお預け。

ピーニュ・ダロラ山とタジオール・ヌーヴ氷河

それでは本日のゴール、アローラのキャンプ場を目指して一気に下ります。峠の標識によれば、ここからアローラまでは約1時間40分。峠を出発、モレーン地形の急坂を下っていきます。しばらくすると、ルートは比較的緩やかな下りとなり、周囲にも緑が目立つようになりました。

30分程下ったところで、巨大な山塊と氷河が右手前方に出現。ピーニュ・ダロラ山(Pigne d’Arolla)とタジオール・ヌーヴ氷河(Tsijiore Nouve Glacier)です。先程渡ってきた氷河と異なり、こちらは非常に荒々しい印象。大迫力です。

アローラのキャンプ場

更に下っていくと、アローラの村に到着(標高1,950m)。今日は久しぶりのキャンプ泊。村の小売店で夕食の買い物をしてから、キャンプ場へと向かいます。そして無事ゴール。緊張感のある、本当に長い一日でした。

今日の宿泊地Camping Arollaは、1969年に開設されたヨーロッパで最も標高の高い場所にあるキャンプ場で、氷河も望める絶好のロケーションが魅力です。今回はここまで。

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