【HR8】オート・ルート/モンブランからマッターホルン~ロングトレイル8日目

オート・ルート(シャモニー~ツェルマット)

ヨーロッパ・アルプスを代表する二つの名峰モンブランとマッターホルン、この麓町(フランス・シャモニー、スイス・ツェルマット)を繋ぐ約180kmのロングトレイル、オート・ルート(Haute Route)。HR8日目は、ラ・サージュからモワリ小屋までの12km(登り1,881m、下り624m)、約6時間の行程です。見所は山小屋直下に見える雄大なモワリ氷河です。

レゾデール村を出発、ラ・サージュ村へ

レゾデールのキャンプ場出発

今朝はレゾデール村(標高1,452m)のキャンプ場で起床、天気は残念ながら雨模様。雨に濡れたテントを畳み、雨具を着込んで早速出発です。

今日の行程は約1,500メートルを登る峠越えを経て、氷河の眼前に立つ山小屋を目指します。今日・明日とルート上に小売店が無くしばらく補給が出来ないため、リュックサックは昨日買い込んだ食料類でパンパンに。これに雨水を含んだテントが加わり、荷物の重さは昨日比約3割増し。

先が思いやられますが、キャンプ場を後にして、まずはラ・サージュ村を目指します。少し登ると、曇ってはいるものの、レゾデールの谷が一望出来ました。

ラ・サージュ村

キャンプ場から1時間ほど緩やかに登っていくと、ラ・サージュ(La Sage、標高1,667m)村に到着。この辺りはヘレン谷(Val d’Hérens)に属し、酪農が盛んで「ヘレン種」と呼ばれる牛の原産地。また、籠などを籐(トウ)で編むヴァレー州の伝統工芸の地としても有名です。

村内には伝統的な家屋が多数あり、近年はこうした歴史的な景観や手付かずの自然を求めて国内外から多くのハイカーが訪れるようです。現在でも暖炉を使用しているようで、夏場であっても家屋脇には大量の薪が備蓄されています。

ツァテ峠越え

ルムワンズ・デュ・ツァテ(ラ・サージュ~ツァテ峠直下の湖)

ラ・サージュ村を過ぎて、ルートは本格的な峠越えへ。リュックの重みに耐えながら、ゆっくりと登ります。標高2,000mを越えたあたりから天候が徐々に回復し、雲間から太陽も見えてきました。ここで朝食タイムにします。雨で冷えた体に、温かいコーヒーが沁みます。

朝食を終え、登りを再開。ひたすら登っていくと、牛舎ルムワンズ・デュ・ツァテ(Remointse du Tsaté、標高2,480m)に到着。ヘレン種の放牧用かもしれません。標識によれば、ここから目指すツァテ峠(Col du Tsaté、標高2,868m)までは約1時間。まだまだ先は長い。

ここで少し寄り道。ガイドブックによれば、このすぐ上に美しい湖(ツァテ峠直下の湖、Lac inférieur du Tsaté)があるようです。僅か数分なので行ってみると、確かにあります。残念ながら曇りで景色は今一つでしたが、晴れていれば背後にそびえる雄大な山々と併せて素晴らしい絶景が望めそうです。

ツァテ峠越え

ルートに戻り、登りを再開。振り返ると、先程立ち寄った湖が眼下に見えます。前方にはようやくツァテ峠の全貌が見えてきました。急な登りと緩やかな登りを繰り返しながら、これまで階段状の台地を数段登ってきましたが、峠越えもついに最終ステージへ。

目の前の急坂を乗り越え、綺麗な花々が咲く中をさらに登っていきます。再び振り返ると湖は既に見えず、下からは雲海のような雲が迫りつつあります。峠越えもいよいよ大詰め。ガレ場となったルートを登っていくと、ついにツァテ峠に到着。

ツァテ峠

ロングトレイルでは、峠からの景色が楽しみの一つ。特にこのツァテ峠からは、これまで踏破してきた景色と、これから進む新しい景色の両方を一望出来ます。

シュイロン氷河を渡ってアローラに下り、谷間を抜けて進んできた昨日から今に至るまでの景色ともここでお別れ。嬉しいことに、先程迫っていた雲もなくなり、今は湖も見えます。そして進行方向には、これから向かう乳白色の氷河湖シャトープレ湖(Lac de Châteaupré)が見えます。

シャトープレ湖へ

ツァテ峠からの下り

峠からの下り道は、まずガレ場の急坂をジグザグに下ります。滑りやすいので、ここは慎重に進みます。しばらくすると、辺りには草花が生え足場も良くなります。

景色を楽しむ余裕が出てきたので、周囲を見渡すと右手方向に圧倒的迫力のモワリ氷河(Glacier de Moiry)が出現!これまで見てきた氷河の中でも、トップクラスの雄大さです。中心に空いた穴は、同箇所の氷河が崩落し出来たようです。そして、今日のゴールであるモワリ小屋(Cabane De Moiry)も氷河を望むベストスポットに見えました。

ゴールも見えたので、足取り軽やかに進みます。ルートは湖のある谷へと一度下り、その後氷河に対して左手側(右岸)を上流方面に向かって登ります。さて、先へ進んでいくと、目の前に湖が。ついたと思いきや、これはバイエンナ湖(Lac de la Bayenna)。氷河から流れる白く濁った水ではなく、澄んだ水が作る湖面は、辺りの風景を反射し、ここではモワリ氷河も素敵に映しています。そのすぐ後に目的の湖が見えました。

シャトープレ湖

シャトープレ湖が見えるのと同時に、左手には巨大なモワリ湖(Lac de Moiry)が見えます。明日はあの湖の右手の山の中腹を進みます。

シャトープレ湖(標高2,389m)に到着。峠からは500m程下ってきました。モワリ氷河から流れ込む氷河水が、この乳白色の湖を作っているのが良く分かります。ここで対岸に渡ります。

モワリ小屋へ

モレーン上のルート

ここからは、氷河が作り出したモレーンの上がルート。氷河に沿って登って行きますが、絶景ポイントを見つけたので、ここでランチタイム。運よく青空も見え、氷河がより一層映えます。

ランチを終え、最後の登りを開始。モレーン上には岩場で歩きにくい場所もありますが、山小屋まではあと少し、慎重に進みます。モレーンを超えると次は急登。高台から先程歩いてきたモレーンを見ると、まるでナイフリッジです。ジグザグ道を一気に登ると、モワリ小屋(標高2,825m)に到着しました。

モワリ小屋

モワリ小屋は1924年に建設された石造りの山小屋です。近年増築が行われたようで、内部は新しく綺麗でした。食堂からは、大きなガラス窓越しに眼下の氷河を眺められ、食事時でも氷河を楽しめました。

今日は濡れたテントを背負ってきたので、到着後小屋の裏手でテントを乾かしていました。そこから見える氷河は素晴らしく、時間が経つのを忘れるほどでした。また時折轟音が鳴り響き、氷河が崩落する様も見ることが出来ました。

モワリ氷河

最後にモワリ氷河の絶景です。何と、この氷河を渡渉してくるハイカー達もいました。今回はここまで。

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