【HR9】オート・ルート/モンブランからマッターホルン~ロングトレイル9日目

オート・ルート(シャモニー~ツェルマット)

ヨーロッパ・アルプスを代表する二つの名峰モンブランとマッターホルン、この麓町(フランス・シャモニー、スイス・ツェルマット)を繋ぐ約180kmのロングトレイル、オート・ルート(Haute Route)。HR9日目は、モワリ小屋からミッションまでの20km(登り462m、下り2,100m)、約7時間の行程です。見所はモワリ氷河やモワリ湖、ヴァイスホルンなど絶景ポイントの他、珍しい羊や高級キノコも登場。

モワリ小屋出発

モワリ小屋からの下り

今日の行程は2,000m強の長い下りがある上、移動距離も20km超の長丁場。足の疲労が心配なため、今朝は5時起床、6時出発。居心地がよく綺麗な山小屋の個室に別れを告げて小屋を出ると、眼下には大迫力のモワリ氷河がお出迎え。抜群のロケーションに立つモワリ小屋(標高2,825m)でした。

それでは今日のトレイルを開始。まずは、昨日上ったジグザグ道の急坂を下ります。辺りはまだ暗く、足元も滑りやすいので慎重に進みますが、雄大なモワリ氷河に魅せられて、つい朝から撮影に励んでしまいました。

雪解け水を渡渉

山小屋から30分強下ったところで、突然の難所に遭遇。足跡が残るルートは雪渓の上を越えていくようですが、この時は雪渓が崩れそうな状態。ちょうど、ここ数日の行程が同じで顔見知りになった米カリフォルニア出身のベテラン・ハイカーが追い付いてきたので、しばしルートのご相談。

相談の結果、滑落の危険がある雪渓を無理して渡るよりも、雪解け水が溜まっている箇所を進む方がリスクが低いとの結論に。水の流れも無く、深さも膝程度、そして対岸にはルートも見えます。そして、まずはベテラン・ハイカーがチャレンジ。登山靴・靴下を脱ぎ、素足でズボンを捲り上げて、水の中を進んで行きます。

そして自分の番。いざ入水。最初こそ足裏の感覚はありましたが、水が凄まじく冷たく、歩く毎に感覚がマヒしていきます。膝程度と思えた箇所も太もも辺りまで浸かってきました。体に異変を感じつつもとにかく前に進み、何とか渡渉成功。初めての水行がアルプスの雪解け水とは、これも貴重な経験です。

モレーン上を進む

何とか無事に渡り切り、靴を履いて再出発です。歩き始めは、まだ全身に寒さを感じましたが、しばらくすると頭がスッキリしてきました。これが水行の効果?と勝手に思い込みつつ、すっかりリフレッシュ出来ました。

そしてルートはモレーンの上へと続きます。周囲が見渡せる少し高い場所まで来ました。振り返ると、荒々しい氷河の絶景が拡がります。のんびりしたいところですが、この先もどんな難所があるかわからないので、しばらくはベテラン・ハイカーの後を追います。

ソルボワ山越え

草地をトラバース

モレーンが終わると、次は草地の山肌をトラバースしていきます。一度高度を上げますが、その後は緩やかな下りとなり、ペースが上がります。背後のモワリ氷河は遠くなりましたが、今度は昨日湖畔沿いを進んだシャトープレ湖が見えてきました。

天気は曇りがちですが、空は徐々に明るさを増してきました。足元には花々が咲いています。よく見ると、アルプスの象徴、エーデルワイスを発見。大変有名な花ですが、意外にも野生のエーデルワイスを見かけることが少ないので、嬉しくなります。

モワリ湖

先に進んでいくと、モワリ湖(Lac de Moiry)が見えてきました。この湖は1958年に建設されたダムで、以降水力発電が行われています。モワリ氷河から流れ出る氷河水が蓄えられているため、氷河湖特有の綺麗なエメラルド色です。

ルートはしばらくこの湖を眺めながら緩やかな下りが続き、湖を越えた辺りで、進行方向右側に見えるソルボワ山(Corne de Sorebois、標高2,896m)へと向かいます。眺めがよく歩き易い道なので、気持ちよくどんどん進みたい所ですが、美しい湖の魅力に勝てずつい撮影に励んでしまい、ペースは一向に上がりません。

ソルボワ山越え

湖を離れ、ソルボワ山を目指して登ります。山頂横が峠(ソルボワ峠、標高2,835m)になるので、これを超えると景色が一変します。名残惜しい景色を何度も振り返りつつ、ジグザグ道を登っていきます。

400m程度登り山頂に到着。山頂からは、これから進むジナル谷(Val de Zinal)やヴァイスホルン(Weisshorn、標高4,505m)を一望出来ます。ヴァイスホルンの先が、(見えないですが)本ロングトレイルのゴール地点、マッターホルンとツェルマットの町です。

ジナル谷へ

珍しい羊

山頂からは約1,300mを一気に下ります。下り始めたところで、珍しい羊を発見。ヴァレー原産のブラックノーズです。イギリス・コッツウォルズ地方などで見かける羊とは容姿がかなり異なります。顔と足が黒く、他は白。角もクルクルしています。なんとも穏やかで愛らしい羊で、思わず撮影タイム。

(ご参考:ブラックノーズ・シリーズ)【TMR2】ツール・ド・モンテローザ~ロングトレイル2日目

スキー・コースの下り

トレイルを再開。この辺りは、冬にはスキー場となるようで、ゴンドラ設備もあります。夏の間は牧草地として先程戯れた羊や牛が放牧されています。ルートは、冬場にゲレンデとなるコースを下っていきます。

見晴らしの良い場所からは、手前のジナル谷やその先にあるアニヴィエ谷(Val d’ Anivier)が良く見えます。今日のゴールはアニヴィエ谷の中央付近、明日は谷間から西への山越えです。これから進むルートが見えると安心感があります。砂利道を下っていきます。

アニヴィエ谷方面へ

スキーコースを下り、モテック(Mottec、アニヴィエ谷方面)とジナルの町への分岐点に到着(標高2,090m、Sorebois Alpage)。本来のルートはジナルへ下りますが、今夜のゴールはルートからやや外れたキャンプ場にしたので、ジナルの町へは下りずに、直接キャンプ場へと向かいます。

ルートは時折細くなる箇所もありますが、よく整備されているので特に問題なく進めます。眼下にはジナルの町も見えてきました。ちょうど、何かのスポーツ大会をやっていたのか、中心部には人が大勢集まりお祭り状態です。歓声を聞きつつ、山間の集落を抜けて川沿いを進んでいきます。

モテック

山道を下ってくると集落に入りました。モテック(Mottec、標高1,556m)の村に到着です。水不足に陥っていた中、ちょうど礼拝堂の前に水場を発見。ここでしっかりと補給します。ベンチもあるので、ここでランチ休憩。

ここまでの長い下りで足にはかなりの疲労が溜まっています。キャンプ場までは残り5キロほど。まだ長い道のりですが、これから道は比較的平坦になるので、何とか辿り着ける目途が立ちました。旅の安全を祈ってから、再出発です。

ミッションのキャンプ場へ

ポルチーニ茸

再び山道に入り、林の中を進んでいきます。すると、林の中で何やらゴソゴソと動く人の気配を感じます。やはり何かを探し歩いているようなので、声をかけてみました。すると手持ちの袋から嬉しそうにキノコを取り出し、見せてくれました。

なんとポルチーニ茸です。香りが良く、強い旨味が特徴の高級キノコを採っていました。しかも、結構なサイズ。まさか今歩いているルート脇にそのようなキノコが生えているとも思わず、正直驚きました。こんなやりとりも、旅の楽しみです。

キャンプ場着

その後、ルート脇をキョロキョロしながら進みますが、そう都合よくポルチーニ茸は見つかりません。視界が開けた場所からは、明日進む方面が見えてきました。明日は朝から激しい登りが待ち受けているようです。

そうこうしている間に、今日の宿泊地であるミッション(Mission、標高1,304m)のキャンプ場に到着。昨日は快適な山小屋でしたが、今日は一転してキャンプ生活。途中に小売店も無かったので、今夜は手持ちの食料で質素な夕食。下りが長く疲れ果てたので、今夜は早めに就寝。今回はここまで。

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