ドイツ・ヴィースバーデン~ボン間を繋ぐ全長約320kmのロングトレイル、ラインシュタイク 。最終日となるトレイル16日目は、ケーニッヒスヴィンターからボンまでの約22kmコースタイム7時間です。ラインシュタイク完結編。
ドラッヘンブルク城付近の分岐点へ
ケーニッヒスヴィンター鉄道駅出発
本日の出発地点はケーニッヒスヴィンター鉄道駅。前回はドラッヘンブルク城からお店が立ち並ぶ登山鉄道に沿いのルートを下ってきましたが、今回はせっかくなので別ルートでラインシュタイク本線合流まで登ります。本線へと続く黄色い道標に沿って、ドラッヘンブルク城(Drachenburg)まで谷間(Nachtigallental)を進みます。
30分程谷間のルートを登っていくと、ドラッヘンブルク城が見えてきました。一般公開されています。前回記事にも写真あり。ここでラインシュタイク本線の青い標識に合流。この周辺では石に彫られた道標が、分岐毎に分かり易く整備されています。
ペータースブルグ山
ミルヒハウシェン
それでは本日のトレイル開始です。最初の目的地はペータースべルグ山(petersberg)。歩き始めるとすぐに休憩小屋が出てきますが、ここはスキップして先へ進んでいくと、オレンジ屋根が特徴的な山小屋レストラン・ミルヒハウシェン(Milchhäuschen)に到着。ここではかつて乳製品や豚などを生産・飼育し、近郊のドラッヘンフェルス城やウォルケンバーグ城に納めていたようです。
ペータースべルグへ
レストランを過ぎてしばらく進むと絶景ポイントに到着。これから向かうペータースべルグ山やライン川が一望出来ます。この後、休憩小屋が2軒出てきます(Schallenberg山のDr.Eduard von Gartzen Hütteと、Gersberg山のWalter Guillaume Hütte)。
小屋を過ぎて林間コースを谷(Mirbesbach)まで下ると、最初の目的地ペータースべルグ山への登りがスタート。山道を登っていくと、ルート脇で「ガサガサ」と落ち葉の上を歩く動物の物音が聞こえます。耳を凝らして音の行方を追っていくと、小さな野ネズミを発見。素早く動き回るので苦労しましたが、何とか撮影に成功。
ペータースべルグ山
ペータースべルグ山はジーベンゲビルゲ(「7つの山」の意)地方にある7座のうちの1座で、18世紀に奉献された礼拝堂に因んで名付けられたようです。周辺はペータースべルグ国立自然公園に指定されており、ブナ林を中心に樹齢150年を超える木々があるほか、山頂付近には歴史と自然を学べる博物館(Schauplatz Petersberg Erlebnisraum für Geschichte und Natur)もあります。
また、山頂には高級ホテル・シュタインベルガー(Steigenberger)があります。このホテルは、これまで何度も歴史の表舞台となってきました。1938年のズデーテン危機時には英チェンバレン首相が滞在、第二次世界大戦後は連合国軍の本部が設置され、その後連合国側と独アデナウアー首相との間でペータースベルク協定が調印される場ともなりました。1965年には英エリザベス2世が国賓として滞在、現在でも様々な国連機関のあるボンで開催される重要な国際会議の場となっています。
ホテルからの景色
ホテルにはビアガーデンもあります。ここからは、ドラッヘンブルク城とドラッヘンフェルス城の両方が望めます。それではここから山道を下っていきます。
ボンへ
ハイスターバッハ修道院
下り始めるとすぐにベンチと記念碑のある場所(Fritz Rösing Platz)に出ます。これを過ぎて大きく右に折れ、先へ進んでいくとハイスターバッハ修道院(Kloster Heisterbach)に到着。シトー会の修道院で、1192年にペータースべルグからこの場所に移設されました。
ドーレンドルフ、オーバーカッセル近郊
修道院を過ぎて谷を越えるとドーレンドルフ(Dollendorf)の郊外に出ます。ここからは、斜面に広がるブドウ畑とドーレンドルフの町を一望出来ます。ライン川とブドウ畑、このロングトレイルでは見慣れたライン川渓谷らしい光景です。
林の中を進んでいくと、オーバーカッセル(Oberkassel)近郊となり、ここにはビューポイントのラーベンライ(Rabenlay)展望台があります。クックシュタイン(Kuckstein)と呼ばれるこの辺りでは、1930年頃まで玄武岩の採掘が行われていました。この採掘場跡の上に、2017年にスカイウォーク展望台が設置されました。
ライン川へ
展望台を過ぎると、ルートは再び林間コースへ入ります。見晴らしの良い場所からは、ゴール地点であるボンの町がはっきりと見えます。のんびり進んでいくと、フォーボーハウス記念碑(Foveaux-Häuschen)に到着。ケルンで煙草製造業を営んでいたハインリッヒヨーゼフフォーボー(1763〜1844)によって建立されました。ここで一休憩し、ライン川へと下っていきます。
市街地を抜けると、ライン川沿いの遊歩道に出ました。対岸に渡れば、いよいよボンの中心地です。
ライン川対岸へ
ライン川に沿ってなだらかな遊歩道は、地元の人々もゆっくりと散歩を楽しんでいます。対岸にはフランクフルトのビルを除くと、ドイツで最も高いビルであるドイツ郵便局(ドイツポスト)の本社ビル「ポストタワー」がそびえ立っています。その奥には国連事務所ビルの「国連キャンパス」もみえます。1991年のドイツ再統一でベルリンが首都となり、西ドイツの首都であったボンの町から連邦議会や省庁など首都機能の移転が決まりました。そして1994年には、ボンは国連機関の集積地とすることが決定され、西ドイツの首都機能を担っていたいくつもの建物が国連へと引き渡され、改修を経て現在も使用されています。ボンの町の建物群をみながら進んでいくと、ケネディー橋が見えてきました。これを渡り、旧税関(Alter Zoll)脇を抜けてマルクト広場を目指します。
ゴール
そしてついにマルクト広場に到着。ゴール地点には何かハッキリと分かるものを期待していましたが、それらしいものは発見できず。ただし、ラインシュタイクの看板があったので、これをゴール地点とします。16日間に渡る長いトレイルでしたが、無事に完全踏破出来ました。
ヨーロッパ・アルプスなどのロングトレイルとは異なり、ラインシュタイクではルートの高低差が然程なく、体力に自信の無い方でも気軽に楽しむことが出来ます。またルート沿いの鉄道を利用することで、特定区間のみを歩くことも容易です。そして、ワインの銘醸地でもあるので、お気に入りのワインを求めてワイナリーを幾つも巡る、そんな楽しみも味わえたトレイルでした。
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