ヨーロッパアルプスの名峰ユングフラウ、メンヒ、アイガーを擁するスイス・ユングフラウ地方を10日前後で一周する約120kmのロングトレイル、ツール・ド・ユングフラウ(Tour of Jungfrau Region)。トレイル初日は、インターラーケンの隣町ヴィルダースヴィルから山頂駅シニゲ・プラッテまでの8.5km(登り 1,428m、下り31m )、約5時間の行程です。
出発地ヴィルダースヴィル(Wilderswil)
ツール・ド・ユングフラウ(TJR、Tour of Jungfrau Region)は、ユングフラウ地方の玄関口であるインターラーケン(Interlaken)の隣町ヴィルダースヴィル(Wilderswil、標高584m)から出発します。この町にはホテルが十数件あるほか、スーパーなども充実しているため出発準備に不自由しません。
またこの町からは本日の目的地であるシニゲ・プラッテ山頂駅(Schynige Platte、標高1,980m)まで登山鉄道(シニゲ・プラッテ鉄道、1893年開通、運行期間5-10月)が整備されています。この鉄道は山頂駅から望むオーバーラント三山の絶景が有名で、シーズン期には観光客で大変賑わいます。
それではTJRトレイル開始です。本日は登山鉄道を利用せずに、山頂駅シニゲ・プラッテを目指して標高差約1,400mを一気に登ります。朝早くホテルを出発、1705年建設と刻まれた屋根付の木造橋を渡り、町外れの教会脇から石畳の登り坂を進んでいくと山道に入ります。
途中駅ブライトラウエネンへの登り
つづら折りの急登と登山鉄道の踏み切り
まだ薄暗い山道を登っていくと、やや開けた場所に出ます。斜面には草地が拡がり、羊が放牧されていました。野生動物ではないですが、トレイル最初の動物は羊でした。動物達との出会いもこのトレイルの楽しみの一つです。元気に朝食を食べている羊達を後に、トレイルは再び山道へと入ります。
登山道を進んでいくと踏切がありました。線路は単線で外側の両レールが車輪用、真ん中の歯状レールが歯車用です。アプト式の登山鉄道ですね。朝早いのでまだ列車は来ないだろうと思い先へ進んでいくと、何やらガタゴトという音が。慌てて引き返して写真撮影、何とか間に合いました。
この後もルートはつづら折りの急登が続きます。ジグザグ道を繰り返しながら、高度を上げていくと、ようやく見晴らしの良い場所に出ます。眼下にはインターラーケンの町、その先にはトゥーン湖(Thunersee)が拡がります。登り始めてから、ここまで約2時間です(含む写真撮影タイム)。
スキークラブの山小屋
ようやく森を抜けると、草地の斜面に出ました。冬場にはスキーコースになりそうな場所です。すると一軒の山小屋が出現。よく見るとスキークラブが所有する山小屋のようです。旗が靡き、雨戸が開いているので現在も使われている様です。ここからは綺麗な景色が望めます。
途中駅ブライトラウエネン
山小屋から10分程度登ると、シニゲ・プラッテ鉄道唯一の途中駅ブライトラウエネン(Breitrauenen)に到着します。この駅舎やトイレは文化財に指定されているそうです。ここからも絶景が楽しめます。折角なので、歴史的な施設の前で休憩にします。
途中駅では、上下線のすれ違いが出来るように線路が分かれています。駅舎の前に張り出されていた時刻表を見ると、何と上下線ともそろそろ到着時刻であることが判明。おやつ休憩を早々に切り上げて、慌てて写真撮影の準備に入ります。
しばらくすると、レトロな車両が印象的な登山列車がやってきました。まずは上り列車が到着。まだ朝早いのに、既に車両は満員状態。途中駅で降りる人は殆どおらず、そのまま山頂駅に向かって進んでいきました。今度は下り列車です。青い空に赤色の車両が綺麗に映えていました。
山頂駅シニゲ・プラッテへの登り
2つの湖と落石注意のルート
途中駅を後にして再び登山道を進んでいくと、木々の合間からインターラーケンの両側に拡がる2つの湖が見えます。インターラーケンの西側に位置するのがトゥーン湖、東側がブリエンツ湖です。両湖の色を比較すると、ブリエンツ湖の方がエメラルド色が濃い(白濁している)ように見えました。
さてルートは落石注意の看板がある箇所を進んでいきます。もっとも、ルートは木杭とロープで落下防止が図られているほか、崩落の危険がある場所では落石防止用のネットや堅固な石組が組まれているのであまり危険を感じませんが、それでも立ち止まらずに先へ進んだほうが良さそうです。
シニゲ・プラッテ鉄道
山頂駅へ続く登山道からは、シニゲ・プラッテ鉄道と度々遭遇します。列車にかなり接近して撮影することも出来るので、ついつい色んな角度や構図でトライしてしまいました。こちらに気付いた車掌さんが手を振る場面もありました。
一方で、この日は徐々に雲が出てきたこともあって、本来絶景が楽しめる場所での写真撮影は残念ながらお預けに。自然が相手なのでこればかりは仕方ありません。その分、撮り鉄業に力が入りました。
山頂駅シニゲ・プラッテ
そして本日の目的地シニゲ・プラッテ山頂駅に到着。コースタイムは約5時間でしたが、トレイル初日で写真撮影に励み過ぎたため、ペース自体はかなりゆっくりでした。本日は、山頂駅に併設されたベルグホテルに宿泊します。
ホテルのすぐ近くには、スイス・アルプスの高山植物をほぼ全部(約600種類)鑑賞出来る高山植物園があります。スイスで初めて森林限界の上につくられた歴史ある植物園で、入園料は無料です。なお、この山頂駅に列車が到着すると、アルプホルンによる歓迎の演奏が行われていました。
宿泊地:ベルグホテル・シニゲ・プラッテ
アルプスの花々
ロングトレイルでは、美しいアルプスの花々を間近で鑑賞できることも魅力の一つです。特にこの日は標高の低い場所から出発したため、高度を上げていく中で花々の植生も徐々に変化するなど、面白い変化を楽しめました。
高山植物園ではアルプスの代表的な花々を満喫できるので、初日から良い勉強になりました。こちらについては、また別の機会でご紹介したいと思います。
夕食
夕食はベルグホテルのレストランです。宿泊者は同じメニュー、同じ時間にサーブされる、もちろん山小屋スタイルです。飲み物はアルコール類からジュースまで幅広くありました。
コース料理は花で飾られたスープからスタート、素敵な雰囲気です。続いて、サラダはなんと使い込まれた飯盒に盛り付けられて出てきました。なかなかのボリュームです。メインは豚肉でこちらも美味しく頂きました。デザートはメレンゲ入りのアイスクリームです。
幻想的な夕焼け
この日は午後から雲が出てきましたが、夕暮れ時にはとても幻想的な光景となりました。夕食時にも関わらず、宿泊客は思わずカメラを取り出して写真撮影タイムに。上手く取れていませんが、太陽の周りには、日暈(ひがさ)と呼ばれる光の輪も見えました。今日はここまで。
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