ヨーロッパアルプスの名峰ユングフラウ、メンヒ、アイガーを擁するスイス・ユングフラウ地方を10日前後で一周する約120kmのロングトレイル、ツール・ド・ユングフラウ(Tour of Jungfrau Region)。TJR5日目はグリンデルワルトからアイガー北壁直下を横断しクライネ・シャイデックへと下る17.5km(上り1,665m、下り549m)、8時間の行程です。見所はアイガー北壁直下を横断するアイガートレイルです。
マルモアルプへ ~TJRルートへの戻り
今朝も快晴!ロングトレイルでは天候を選べないので、快晴の日は本当に嬉しいですね。アイガー北壁に朝日が当たり始めた頃、宿泊地グリンデルワルトを出発です。まずは昨日下ってきたマルモアルプまで登り返し、TJRルートへ戻ります。
営業時間前の静かなロープウェイ駅の前を通過し、ここから昨日立ち寄ったプフィングシュテック駅へと上ります。TJR5日目になると馴染みのある地名が増えてきます。マルモアルプまでは徒歩40分の標記です(ここの標高は1,028m)。牛達が草を食む長閑な光景を楽しみつつ、林間コースを急登しルートへ戻ります(マルモアルプ、標高1,120m)。
ボネレン小屋へ
グリンデルワルト氷河峡谷
マルモアルプまで戻りルート沿いを西側へ登っていくと、深く切れ落ちたグリンデルワルト氷河峡谷(Gletscherschlucht)に到着です。何と、崖下に飛び降りるバンジージャンプの施設があります。ルートの橋上から下を覗くと高度感は抜群。峡谷沿いを歩く探検ルート・トンネルも整備されています。
先へ進むと渓谷のビジネス史に関する案内板を発見。この渓谷では、1860~1910年頃(第一次世界大戦頃)まで氷河をブロック状に切り出し、グリンデルワルトへ運ぶ「氷」ビジネスが盛んだったとの由。当時は今よりも氷河が町に近い位置まで流れていたようです。
ボネレン小屋への登り
渓谷を渡るとここからは林間コースを一気に登ります。標識の無い分岐点も幾つかありますが、道幅の広いメインルートを進んでいきます。最近開催されたアイガー・ウルトラトレイルがこのルートを使用したようで、進路を示す目印が各所にあり助かりました。
ジグザグ道を登って行くと開けた岩場に到着。ここは丁度谷間に位置し、谷奥には昨日登ったシュレックホルン登山道も見えます。またここは取水地のようで、それを示す標記プレートもありました。ここからアイガー東壁側を登って北壁直下へ進みます。
東壁の岩場からはグリンデルワルトの町が見えます。岩場コースを登り梯子を越えると再び林間コースに入ります。辺り一面、苔に覆われていますが、その中で野イチゴが小さな赤い実をつけていました。そしてボネレン避難小屋(Boneren、標高1,508m)に到着です。
鳥と野イチゴ
ここで少し番外編。この周辺では多くの小鳥達を見かけました。写真撮影に苦労しましたが、ポーズをとってくれたのがコガラ。ヨーロッパ全土にひろく生息しており、科学的に最初に言及されたのはスイスだったようです。また上述の通り、苔の中に真っ赤な野イチゴが実っていました。
アイガー北壁直下へ
アイガートレイルへ(アルピグレン分岐点)
ボネレン小屋からは東壁沿いを北壁に向かって進みます。斜度が緩い箇所では林の中に入ります。木々の切れ間からは時折開けた景色も望め、後ろを振り返るとグローシェ・シャイデックなどこれまで歩いて来たルートを一望出来ます。
暫く進むと木々が無くなり、ルートは北壁側に入ります。ここから北壁直下の斜面をトラバースしていきます。草木や岩場の箇所を進みますが、ルート上には雪渓も残っており、北壁の険しさが一段と引き立ちます。アルペンローズも群生していますので、時期を合わせて訪れるのも良さそうです。また大小幾つもの滝があり、岩肌を削りながら流れています。
先へ進むと避難小屋が出てきます。これを過ぎると、アルピグレン(Alpiglen)の分岐点です(標高1,725m)。ここからアイガートレイルがスタートします。登山鉄道駅のあるアルピグレンからはハイカーが続々と上ってきており、また進行方向からも多数の人が来るなど、人気のルートであることが伺えます。
ランチ休憩
景色が良いのでここでランチ休憩にします。この日は天気も良く、絶景を楽しみながらのランチです。持参したコーヒーを沸かしてのんびりと休憩。ランチ後は、温かい陽気に包まれて、ついひと眠り。
アルピグレンの駅に列車が到着すると、続々と人が登ってきます。標識によると、分岐点から駅までは約20分、ここからアイガーグレッチャー駅(Eigergletscher)までは2時間25分です。日帰りトレッキングとしても程よいコースですね。さあ、後半へ出発です。
アイガートレイル
まずは北壁直下まで一登り。ジグザグ道で高度を上げます。曲がり角では、同じようにランチ休憩を楽しむ人達がいます。登りの後は、北壁を間近に見上げながらのトラバース。この区間がアイガートレイル最大の見所です。
先へ進むと、行く手には今日のゴール地点クライネ・シャイデック(Kleine Scheidegg)が見えてきました。すると前方から牛の一行がルートを進んできます。道幅が狭く、なかなか通してくれそうもないので、道を譲ります。近くには小さな滝があり、水を飲みに来ているようです。
すれ違うハイカーの数も多く、老若男女問わず、夫々のペースでハイキングを満喫しています。ルートはガレ場へと入り荒々しさが増していきますが、ルート自体は良く整備されているので怖さはありません。天候に恵まれ、太陽が照りつけていましたが、気温は上がらず気持ちの良いトレイルでした。
アイガー北壁の登攀ルート
ガレ場を越えて一登りすると、アイガー北壁を見上げる絶好の展望スポットに到着です。ここからは、アルピニスト達が挑戦し続けるアイガー北壁の登攀ルートが見えます。案内板には初登攀時のルートが紹介されており、実際どこを登っていたかが分かります。
登攀ルート最大の難所と言われた「白い蜘蛛」もその様子が見て取れます。白い氷の塊が蜘蛛のようです。またアイガー山中を貫くユングフラウ鉄道の途中駅アイガーバンドの「窓」も、ここからその位置が確認できます。険しい箇所に造られているのがよくわかります。
クライネ・シャイデック
アイガーグレッチャー駅
展望台から少し進むと、アイガーグレッチャー駅に到着です(標高2,320m)。ここにはユングフラウ鉄道の途中駅があり、また近年開業したグリンデルワルトからの直行ゴンドラ、アイガーエクスプレスの終着駅でもあります。鉄道とゴンドラ間の乗り換えも可能です。
新設された駅の建物は近代的なデザインで、駅の中には食事を取れる売店やトイレがあります。駅のテラスからは氷河を纏ったメンヒ、ユングフラウを間近に望めるため、観光客に人気のスポットになっています。ここで一休憩し、今日のゴール地点クライネ・シャイデックへと下ります。
アイガー・ユングフラウ・ウォーク
アイガーグレッチャー駅からクライネ・シャイデックへの下り道は、鉄道の線路沿いに下る最短ルートと、「アイガー・ユングフラウ・ウォーク」と呼ばれる緩やかで景色の良いルートがあります。勿論、景色の良いルートを進みます。
ルート前方にはクライネ・シャイデック、後方にはメンヒ、ユングフラウが綺麗に見えます。ルート脇にはアルプスの花々が咲き、牛が放牧されています。また途中には、年代毎の登攀道具の紹介や昔の山小屋、北壁登攀ルートの説明施設など様々なアトラクションがあり、これらも楽しめました。
のんびりと観光しつつ、クライネ・シャイデックに到着(標高2,061m)。分岐点からは50分程度です。クライネ・シャイデックには鉄道駅があり、駅周辺にはホテルやレストラン、土産物店などが揃っています。この日は駅には立ち寄らず、本日の宿へと向かいます。
グリンデルワルト・ブリック(宿泊先)
本日の宿泊先グリンデルワルト・ブリックは、クライネ・シャイデックの駅から約5分との案内板があります。実際は5分以上かかりますが、クライネ・シャイデックの喧噪から外れた場所にあり、リラックスして過ごせます。
この宿からは、クライネ・シャイデックとその先に拡がるオーバーラント三山の素晴らしい眺望が楽しめました。料理も美味しく、ゆっくりと休めました。今日はここまで。
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