【概要編】ツール・ド・モンテローザ~アルプス・ロングトレイル

ツール・ド・モンテローザ

スイス・イタリアの国境を越えて名峰モンテローザの周囲を一周する約180kmのロングトレイル、ツール・ド・モンテローザ(TMR)。氷河歩きや高所歩道などスリル満点のトレイルを体験できるこのコースは、ヨーロッパアルプスのトレイルの中でも屈指の人気コース。日本ではあまり知られていないその絶景・魅力を、完全踏破した体験を基にご紹介します。今回は概要編です。

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ツール・ド・モンテローザ概要

モンテローザ

モンテローザ(伊:Monte Rosa)とは、スイス・イタリアの国境に跨るヨーロッパ・アルプス第2位の高峰(標高4,634m、最高峰はモンブラン)です。正確には、モンテローザは独立峰ではなく連峰を構成しており、この最高峰はデュフール峰(スイス最高峰、伊:Punta Dufour、独:Dufourspitze)です。因みに、ヨーロッパ・アルプスの中では、西アルプス・ペンニネアルプス山脈(英: Pennine Alps=ペナイン・アルプス)に属します。

モンテローザ周辺の高所には現在でも多くの氷河が残っており、雄大且つ神秘的な景色が拡がっています。またこれら氷河の浸食によって形成されたU字谷では、「アルプスの少女ハイジ」の世界のような酪農を中心とする小さな村々が点在し、アルプスならではの原風景を見ることが出来ます。

ツール・ド・モンテローザ

ツール・ド・モンテローザ(TMR、仏:Tour du Mont-Rose, 伊:Tour del Monte Rosa)とは、スイス、イタリアの国境を越えてモンテローザ山群の周囲を一周する約180kmのロングトレイルです。「TMR」と書かれた標識・目印がトレイル上に整備されていますが、高所の山道である上、残雪や崩落等によるルート変更等もあるため、当然地図は必須です。

TMRスタート地点は特に決められていないので、今回はTMRルート上にあるスイスの山岳リゾート地、ザース・フェー(Saas Fee)としました。アルプスのリゾート地の中には、ガソリン、ディーゼル車両の乗り入れを禁じているところがありますが、ここもその一つです。町外れにある大型駐車場に車を預け、ここからモンテローザの周囲を反時計回りに一周します。勿論、逆回りやコースの一部を楽しむ人も大勢います。

コースは標高1,200~3,300メートルの範囲で登り・下りを繰り返します(最高点は3,301メートル)。全行程の踏破には、脚力等にもよりますが一般に10日前後とされており、コース沿いに点在する山小屋やホテル、テント泊であればキャンプ場を利用します。

おススメのガイドブック

今回利用したガイドブックは以下の本(英語版)です。このシリーズはこれまで踏破したロングトレイルでも毎回利用しており、必要な情報がよく網羅されています。なお、今回のTMRに関しては、やや情報が古く(2015年のアップデート)、コースタイムも掲載されていなかった点が残念でした。

(ご参考)日本語のガイドブックもあるようなので(2018年出版)、ご案内しておきます。サンプルを見る限り、内容も充実しているように思います。

コース日程

さて、実際に踏破した際のコース日程は全9日間でした(図表1参照)。各行程の魅力は次回以降ご紹介していきますが、今回は全体の概要を簡単に触れておきます。

図表1:行程表

日数行程距離登り下り時間
1日目Saas Fee – Grächen22km1000m1,200m9h
2日目Grächen – Randa (迂回)18km400m500m6h
3日目Randa – Zermatt24km1500m1,300m10h
4日目Zermatt – Plan Maison20km1,800m800m9h
5日目Plan Maison – Champoluc21km600m1,400m8h
6日目Champoluc – Gressoney17km1,400m1,300m6h
7日目Gressoney – Alagna22km1,400m1,800m7h
8日目Alagna – Macugnaga28km1,600m1,400m10h
9日目Macugnaga – Saas Fee25km1,700m1,300m9h
合計197km11,400m11,000m74h

序盤~ザースフェー発、高度感のあるヨーロッパ・ウェグを満喫

トレイル序盤は、モンテローザの北側、スイス領内を進みます。出発地ザースフェーからモンテローザ山脈の北端まで進み、ここから南に進路を変え、マッターホルンの麓町として有名な山岳リゾート・ツェルマット(Zematt)を目指します。

序盤の見所は、「ヨーロッパ・ウェグ(道)」と呼ばれる高所歩道です。南進してすぐの山村グラッヒェン(Grächen)からツェルマットに至るこのルートは、1997年開通後、マッターホルンや氷河の絶景が臨めることから大人気トレイルとなり、ルート上には山小屋等も整備されました。その一方で、大変残念なことに大規模な崩落が頻繁に発生、ルート閉鎖・迂回路整備が常態化しています。

そんなヨーロッパ・ウェグですが、崩落個所に設置された世界最長のつり橋は圧巻です。これをクリアした後も、くさり場が連続する文字通りの断崖絶壁ルートを進み(途中には絶壁すぎてルート設置を諦めた思われる硬岩掘削トンネル等も通過)、高度感も楽しめます。そして圧倒的な存在感のマッターホルンが徐々に姿を見せてくれます。

中盤~ツェルマット発、スリル満点の氷河越えにチャレンジ

中盤はイタリア語でチェルビーノと呼ばれ、スイス側とは異なる山容を見せるマッターホルンを見つつ、山脈南端のグレッソネイ(Gressoney)までです。ツェルマットを出発、高度を徐々に上げていくとその雄大な山容が目前に迫ってきます。更に登るとガンデック小屋(Gandegg Hütte)に到着、ここからは眼下に雄大なテオドゥール氷河下流部が拡がっています。これは必見です!

ルートはいよいよ中盤のメインイベント、氷河渡りに突入。上記山小屋近くから氷河に降り、氷河の上を登っていきます。この渡渉コース付近は夏季でもスキー場がオープン、スキー・スノボー客が氷河の上を楽しそうに滑走していきます。とはいえ周辺にはクレパスもあるらしいので、高い緊張感の下、慎重に進みます。最後は雪道の急斜面、ここを登り切るとTMRの最高点、テオドゥール峠です。この峠がスイス・イタリアの国境地点で、ここからイタリア側を進んでいきます。

峠付近は氷河が浸食した岩石中心の荒涼とした大地ですが、高度を下げていくと植物や放牧された牛達がみられる気持ちの良いコースとなります。麓村まで降り鋭気を養った後、次はピンター峠(Pinter)越えです。この峠はチャレンジ意欲が湧く、峠らしい峠です。峠は2段あり、1段目はジグザグ道の急坂、高度感があり足下もガレ場です。ここを登りきると、下からは見えない2段目が登場。この峠越えをクリアすると、その後は視界が開け、のどかな風景の中を下っていきグレッソネイ村に到着。

終盤~グレッソネイ発、イタリアの美しい渓谷・伝統的な山村を巡る

終盤はイタリア側アルプスの美しい渓谷や木組みの家々が立ち並ぶ伝統的な山村を巡りながら北上、スイス・ザースフェーに戻るコースです。この地域は、ドイツ語を母語とするヴァルサー人の文化も色濃く感じられ、アルプスの歴史を学ぶことができます。

終盤コースの特徴は、オレン峠(Olen)、トゥールロ峠(Turlo)、モンテモロ峠(Passo Moro)と毎日峠越えがあること。同じ峠でも印象は夫々異なり、オレン峠は峠付近に美しい花々が咲き、自然の植物園になっています。トゥールロ峠は中世から続く物流の道として石段・石畳の整備が行き届いているうえ、峠には石造りの机・椅子もあり、この峠道が人々にとって如何に重要であったかが伺い知れます。モンテモロ峠は何といっても黄金に輝くマリア像。スイスとの国境にあり、旅の安全を祈願しました。ここまでくるとゴールまであと少しとなります。

モンテモロ峠を下り始めると、ザース渓谷最深部にあるマットマーク貯水湖(Mattmark)が見えます。氷河の水を貯めた美しい乳白色の貯水湖の脇を通り抜け、渓谷の中の林間コースを更に進んでいくと、ゴール地点ザースフェーに到着です。

アルプスの動植物

動物編

アルプスの山中では、多くの動物に出会えます。アルペン・マーモット、アイベック、シャモアが代表例で、このほかにも黒リスなどの野生動物が頻繁に登場してくれます。ライチョウやジョウビタキの仲間をはじめとした鳥達にも数多く出会えました。

野生動物に加えて、立派なカウベル(大きな鈴)をつけ放牧されている牛達がトレイル上に横たわっていたり、普段見かけることがないヴァレー地方原産の羊、ヴァレー・ブラックノーズが放牧されていたりと、多様な動物と出会うことが出来ます。

植物編

美しい花々を楽しむことが出来るのもアルプスの魅力。本当に癒されます。

最後に

今回は概要編をお届けしました。TMRの魅力を少しでもお伝えできれば幸いです。次回は各行程の詳細編でお会いしましょう。

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