【TMR4】ツール・ド・モンテローザ~ロングトレイル4日目

ツール・ド・モンテローザ

スイス・イタリアの国境を越えて名峰モンテローザの周囲を一周する約180kmのロングトレイル、ツール・ド・モンテローザ(TMR)。氷河歩きや高所歩道などスリル満点のトレイルを体験できるこのコースは、ヨーロッパアルプスのトレイルの中でも屈指の人気コース。今回は4日目(ツェルマットからプランメゾンまでの20km、上り1,800m下り800m、9時間)の行程をお届けします。

ツェルマットからテオドゥール氷河へ~マッターホルンを望む登り坂

本日のルートは、マッターホルンの麓町ツェルマットから南下、スイス・イタリアの国境テオドゥール峠を越えてイタリア側に抜ける約20kmのコース。間近に迫るマッターホルン、TMRの主役モンテローザ連峰・氷河群など見所が盛り沢山ですが、何といっても氷河の上を進む「氷河渡り」が本日のメイン。もっとも、その前に約1,800mを一気に登る必要があるので、結構タフな一日となります。

ツェルマットからツムゼー

快晴の中、早朝に出発、町を縦断する川に沿って進みます。ここからはマッターホルンの堂々とした山容が望めます。なお、町の中心部には「日本人橋」と呼ばれる橋があり、マッターホルンの写真撮影には絶好のスポットです。今朝のマッターホルンは、雲一つ寄せ付けず、朝日の陽光が綺麗に輝いていました。雲のないマッターホルンに出会えるかは運次第ですが、早朝は比較的確率が高いようです。

町外れにある氷河スキー場リフト乗り場の脇を抜け山道に入ると、人影もほぼなくなりました。稀にすれ違うのは犬を連れた朝の散歩の人。気持ちよく挨拶して、川を渡り歩を進めます。朝日を浴びたマッターホルンがどんどん近づいてきます。振り返ると、まだ朝日が差し込む前のツェルマット谷の彼方が明るく輝り始めた、幻想的な光景が拡がっていました。

緩やかに登っていくと、ツムゼー(Zum See)の集落に到着。沢山のお花で綺麗に飾られた可愛らしいお店があり、開店前の準備が始まっていました。

ツムゼーからフーリ

ツムゼー周辺は日中であれば人気のハイキング・コースですが、まだ早朝のためハイカーもほとんど見かけず、静寂に包まれた森林コースを小鳥や牛を見ながら登っていきます。森林を抜けると徐々に高木が無くなり、森林限界近くまで登ってきたことを実感します。

視界が開けたので周囲を見渡すと、あちこちに氷河や雪山が見えます。方角に注意して目を凝らすと、このロングトレイルの中心、モンテローザ連峰が氷河の先に顔を覗かせていました。TMR4日目にしてやっとご対面、迫力ありますね。

ガイドブックでは、この先フーリの中心を通るよう記載されていますが、今回はフーリのゴンドラ駅には寄らずに横を抜けていきます。

フーリからフルッグガルテン

フーリの村外れにあるレストラン小屋Hermetjeを越えると、再び視界が開けます。正面にはマッターホルン。幸運なことに本日は快晴、何度も写真撮影してしまいました。ここまでくると、鋭い稜線もはっきりと確認できます。本当に間近に迫ってきました。

振り返ればツェルマット谷にも朝日が差し込み始め、ゴンドラも運転を開始、人々の一日が始まってきたのが分かります。歩いて登るからこそ感じられるこの変化を存分に楽しみます。モンテローザを望んでいると、マーモットがあちこちに次々に出現。シャモアも草を食んでました。

フルッグガルテンからトロッケナーシュテグ

フルッグガルテン(furgg garten)はなだらかで、景色の良い、休憩には最適の場所です。ここで芝生の場所にシートを広げて気持ちの良い小休止。ついにマッターホルンの肩の高さまで登ってきました。地面も岩々が主体となり、緑の草に覆われていたこれまでとは少し雰囲気が変わります。谷にはツェルマットの町とこれまで歩いてきた道、西側にはモンテローザ山群とその氷河が見渡せます。

トロッケナーシュテグからガンデック小屋

ゴンドラ駅トロッケナーシュテグまで登ってくると芝生も見かけなくなり、動物も少なくなります。そんな中、ふと目を転じると間近にシャモアらしき姿が。お互いにビックリでした。

先に進んでいくと、ルート標識を塗り直しているおじさん2人組に遭遇。少し言葉を交わし、この先の道のりを励まされましたが、この整備に感謝です。本当に職人技です。

この近辺では8月中旬でも雪渓が残り、この上を渡っていきます。

ガンデック小屋からのモンテローザと氷河の絶景

斜度のきつい雪渓を登ると、黄色いガンデック小屋(Gandegghütte)に到着。この眼下には、壮大なテオドール氷河下部とゴールナー氷河、その先にはモンテローザ連峰が拡がります。谷向こうにはゴールナーグラート展望台も。この日の強い陽光を遮るものもなく、圧巻の光景でした。TMR屈指の撮影ポイントだと思います。

ここからもう少し登り、いよいよ本日のメイン、テオドール氷河に向かいます。

テオドール氷河渡り~ガンデック小屋からテオドゥール峠~

ついにテオドゥール氷河に到着。でも、この氷河への取付口が見当たりません。例年比、ハイカーが少ない、雪溶けが早い、など理由は不明ですが、TMRの標識を確認出来ませんでした。早速、地図とGPSでルート検討に入ります。先行グループも同様に迷っている模様。氷河を避けてガレ場を極力進むルートも検討しましたが、こちらは道がなくむしろ危険でしたので、結局、足跡が残り比較的安全そうな箇所から氷河に降り立ちました。

慎重に進んでいくと、すぐに氷河スキーのコースと合流、スキーヤー達が楽しそうに滑降していきます。これで一安心、ルートに出たと思います。遥か先を先行していたグループも、当初断念したガレ場ルートを苦労の末何とか克服、無事合流してきました。整備された氷河の上は安心感がありますが、そこはやはり氷河の上、細いクレパスもあって思わずヒヤリとします。

氷河に逆流する恰好で登っていくと、ようやく山小屋が見えてきました。そこが峠ですが、その前には雪渓の急登が控えています。早朝からの登りで既に体力をかなり使い果たしているうえ、ここは氷河と異なり急勾配、かつ雪が凍っている箇所では滑り易いという、TMR屈指の難所です。細心の注意を払って慎重に進みます。安全第一、ヘトヘトになりながらも何とかクリア、峠に到着です!

イタリア側TMRへ突入~テオドゥール峠からプランメゾン~

テオドゥール峠に到着、ここからはイタリア側の景色が一望出来ます。今晩の宿まであと僅かですが、まずは峠で小休止。

冬季にはスキー場となるコースを下っていくと、これまでとは異なる姿のマッターホルン、いやチェルビーノ(イタリア語)が。雲を纏い全容は確認できませんが、厳しさは健在です。古びた教会の脇を過ぎ、どんどん下っていくと、やっと草の生える大地が出てきました。今晩の宿があるプラン・メゾン(Plan Maison)も見えてきました。

何とここにきて、夕立。急いで雨具を纏い、最後のひと踏ん張りです。でも、今日はよくここまで持ち堪えてくれました。そして無事、宿へ到着です。長い、長い一日でした。

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