ドイツ・ヴィースバーデン~ボン間を繋ぐ全長約320kmのロングトレイル、ラインシュタイク 。トレイル12日目は、古くからワインで栄えた町・ロイテスドルフから古代コーマ帝国が整備した国境防衛線の端にあたるラインブロールまでの約15kmです。
ロイテスドルフの街中散策
出発地点:ロイテスドルフ鉄道駅
本日の行程は前回と異なり無理なく進める距離なので、景色・街並を楽しみながらのんびりと進みます(前回は総距離40km弱)。出発地点はロイテスドルフ(Leutesdorf)鉄道駅。南側出入口を出ると目の前にはライン川、対岸にはアンダーナッハ(Andernach)の歴史的街並が拡がります。
ロイテスドルフの歴史は古く、ライン川中流域下部では最古・最大規模のワイン醸造地として発展、6世紀には既に醸造が行われていたようです。ライン川沿いには、華やかな往時を偲ばせる立派な建物が建ち並んでいるので、今朝は街中散策からスタートです。
ライン沿いに建ち並ぶ歴史的建造物
それではライン川に沿って早速出発。まずはドイツ著名作曲家バンガート(August Bungert、1915年没)のイオニア式旧邸宅。続いてピンク色のヨハネスブルグ修道院跡(Johannesburg、改装中)を過ぎると、1547年建設の旧税関ゲート(Zolltor)がお出迎え。ゲート上部にはライン川が大増水した際の水位記録が残っています。隣接するテラス付建物は旧税関職員の住居跡です。
ゲートを抜けて先へ進むと、トリ―ア選帝侯・大司教の旧別邸ジン(1618年建設、ZennまたはZehnthof)が出現、現在はユースホステルとして利用されています。ライン川に面した側には、増水に備えた強固な石垣が残ります。この先にはマリエンブルグ城(Schloss Marienburg)がありますが、今回はここからライン川を離れて街中を進みます。
街中散策
ワイン醸造が盛んなこの町には現在でも17件のワイナリーが軒を連ねており、至る所に看板が見えます。町の歴史博物館にも昔のワイン醸造器具が展示されています。先に進むと、1138年創建された女子修道院跡(Nonnenhof)や聖ローレンティウス教会(St. Laurentius)などの教会施設が現れます。大司教の別邸もあり、多くの聖職者がここで暮らしていたようですね。
ここで興味深い看板を発見、ワイン・ツアー(Weinkul Tour)と題した約3㎞のハイキング・コース案内板です。さすがブドウの産地ですね。なお、ブドウ畑の更に上(高所)ではブラックベリーの栽培が盛んで、ブラックベリー・ワインなども有名です。それでは街中散策はここまでとして、ここからトレイル開始です。
ライン川沿いの村・ハマーシュタイン ~中間地点~
エドモンド小屋
町を抜けて一登りすると見晴らしの良いルートに出ます。先へ進むとエドモンド小屋(Edmund Hut)に到着。残念ながら小屋は閉鎖中でしたが、本来であれば眼下に拡がるブドウ畑のワインを片手に、ライン川の絶景を楽しむことが出来るのでしょう。今回は水で我慢。
ラインシュタイク本線は小屋に向かって右側方向(ライン川上流側)ですが、ここから少しの間、鎖場の急登ルートになります。小屋の左側には迂回路があるので、高所恐怖症の方や登山靴でない場合にはご検討下さい(小屋前に注意喚起有り)。急登を終えるとベンチがあるので、ここで一休みです。
ロイテスブルグのブドウ畑
ここからは高台となり、ライン川やブドウ畑の絶景を楽しみながら進みます。ライン川方面に飛び出た場所には巨大ブランコの展望台(Weinbergschaukel)があります。幼い先客がいたのでブランコ遊びは断念。ライン川に向かって飛び込むような写真が撮れそうでした。
この辺りの斜面には山桜やプラムのような木々が多数植えられています。ちょうど春先に訪れたので、白やピンク色の綺麗な花が咲き始めていました。満開まではあと少しです。テーブル付きのベンチも整備されているので、絶好の休憩ポイントですね。
ミュールバッハ谷
続いてルートは谷越区間となり、ミュール川の流れるミュールバッハ(Mühlbach)谷へと下ります。ブドウ畑はこの辺り一帯にも拡がっています。谷を越えると険しい崖が出現。崖の上には10世紀に建造されたライン渓谷中流域最古の城、ハマーシュタイン城(Hammerstein Ruins)の丸塔跡があります。
対岸には14世紀建造のナメディ城(Burg Namedy)が見えます。この城は名家のホーエンツォレル家が所有しており、コンサートやパーティ会場等に使用されています。ライン川に向かって伸びる広い前庭と白く美しい姿が印象的でした。ここからひと登りして崖の上を目指します。
ハマーシュタインの村とワイナリー
登りの途中、日本では見かけないズアオアトリ(独Buchfink、英Chaffinch)が道案内してくれました。ヨーロッパではよく見かける鳥で、歌鳥(独Singvögel、英Songbird)として有名です。ドイツのハルツ山地では15世紀以降この鳥の歌声を競う「のど自慢大会」があり、ドイツ無形文化遺産に登録されています。
歌鳥に別れを告げて先へ進みます。崖を越えて下り坂になると、ハマーシュタイン(Hammerstein)の村が見えます。ちょうど景色の良い場所にベンチがあったので、ここでランチ休憩です。
村に降りると、これまで度々合流してきたリムス街道と交差します。村の中を歩いて行くと、数件のワイナリーがありました。お弁当を食べて背中が軽くなっていたこともあり、誘惑に負けて厳選した3本をお土産に。美しいブドウ畑をずっと見てきたので、今回は仕方がありません。
本日のゴール・ラインブロールの町
ラインブロール展望台
町を後にして今度は谷沿いを緩やかに登っていきます。途中からは九十九折りの急登。木漏れ日溢れる春の陽気な中、少し重くなった背中を気にしつつ一気に登りきると、ライン川沿いに拡がるハマーシュタインの町を一望出来ます(冒頭写真)。
この崖の先端にあるのが、周辺一帯を見渡せるラインブロール展望台(Rheinbrohler Ley)です。ここからは、これまで踏破して来た側とこれから進む側の両方を眺めることが出来ます。この先を下っていくと、本日のゴール・ラインブロールの町に到着です。
ラインブロールの町
展望台からのんびり下っていくと、第一次世界大戦の慰霊碑(Ehrenmal des Infanterie-Regiments Nr. 29)を発見。町の紋章のようなものもあり、お祈りを捧げてから更に下っていきます。そしてラインブロール(Rheinbrohl)の町に到着です。
一際目立つ建物がネオゴシック建築様式の聖スーツベルトゥス(St. Suitbertus)カトリック教会で、クリスマス時期には教会内部で大規模な飾りつけが行われるようです。町の中心部には、7世紀建造の市庁舎や13世紀建造のゲルトルード礼拝堂(Gertrudenkapelle)など、歴史的な建造物もあります。
またこの地は古代ローマ帝国がライン川中流域一帯に設置した国境防衛線の端にあたります。そのため、ここに復元された監視塔は一連の世界遺産登録物の中でも栄えある1番目。このトレイルでは、これまで何度も登場してきただけあって少し感慨深いですね(10日目編、11日目編)。今日はここでおしまい。
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