【VA1-D3】 Swiss Via Alpina 1/スイス横断のロングトレイル3日目

スイス・ヴィアアルピナ1

スイス国内を東から西へと横断する総距離390kmのロングトレイル、スイス・ヴィアアルピナ1(別名:クロッシングスイス、 Crossing Switzerland)。スイス隣国リヒテンシュタインの首都ファドゥーツを出発し、スイス国内の風光明媚な絶景を満喫しつつ、全20ステージ・14の峠を越えて(累積標高差23,600m)、レマン湖畔の町モントルーを目指します。今回は3日目(ヴァイスタンネン~エルム)編です(概要編はこちら)。

ヴァイスタンネン出発

ヴァイスタンネン

今日の行程は、宿泊地ヴァイスタンネン(標高1,003m)を出発し、今回のロングトレイルでは最初の本格的な峠となるフー峠(Foopass、標高2,223m)を越えて、エルム(Elm、標高960m)へと下ります。愛用のガイドブックによれば、総距離24km、コースタイム7-8時間のトレイルです。

晴れ模様の中、朝5時に宿を出発します。が、いきなりトラブル発生。昨晩宿泊先にお願いした朝食のお弁当セットが見当たりません。どうやら同様の状況と思われる宿泊客がいたのでと意見交換するも、同様に困惑している様子でお弁当の所在は不明。一方で、今日は長丁場なので、これ以上時間のロスは避けるべく、お弁当セットを断念して出発。幸い、手持ちの補給食は十分にあります。

なお、宿からは後程メールで「冷蔵庫に保存してあった」と連絡を頂きましたが、そこには鍵が掛かっており入れませんでした。コミュニケーションの大切さを改めて痛感した出来事でした。さて、本編に戻り、朝焼けの中、村内を抜けていくと、飼育されているヤギを発見。朝の挨拶を交わし、村を後にします。

アイベックス・トレイル

村を出ると、ここからは小川沿いを進みます。橋を渡った先に、立派なアイベックスの像と案内板があります。どうやらここはアイベックス・トレイルと命名されている様子。その後もアイベックスに関する案内板が次々に登場するので、トレイルを歩きながら学習出来るよう作られています。

続いて、全く別のテーマで登場したのが世界遺産の案内板。この辺り一帯は、「サルドナ地殻変動地帯」として、2008年ユネスコ世界遺産に登録されており、世界でも類を見ない程、断層観察がし易いことがポイントです。

尚、上述の案内板では、この辺りの川底にある特徴的な石についても触れています。案内板で触れらていたものとそっくりな石を川の中で発見。色・模様からして、確かに特徴的です。朝から、何やら盛り沢山のトレイルで撮影に時間を取られますが、先へと進んで行きます。

山小屋ワラブッツへの登り

山小屋アルプ・ジーウ

アイベックス・トレイルの最後には、この地で生息する野鳥などを紹介した案内板があります。その後ルートは車道と合流。早朝に搾った牛乳を運ぶ車と何度かすれ違いながら、最初の目的地である山小屋アルプ・ジーウ(Alp Vorsiez、又はAlp Siez、標高1,176m)を目指して進みます。

少し視界が開けたところに出ると、これから進んでいく山並みが見えてきました。手前には山小屋アルプ・ジーウも見えます。今朝はこの谷を登っていきます。

ヴァイスタンネンを出発後、約1時間30分で山小屋アルプ・ジーウに到着。出来立てのヨーグルト等を購入したかったのですが、まだ朝早いため、お店は開いていませんでした。なお、ここに設置されているスタンプはヴァイスタンネンのものです。

マーモット初登場

山小屋を後にして、先へと進みます。案内板によれば、ここからフー峠までは4時間20分、ゴール地点エルムまでは7時間10分。ん、これでは計算が合いません。ガイドブックのコースタイム7-8時間に対して、既に1時間30進んできました。どうやら、ガイドブックの記載は、現地の案内板よりも短めに記載されているようです。

この先が想定以上に長いことを理解し、再び出発。青空の下、緑の牧草地が拡がる中を気持ちよく進んで行きます。前方に見える山並みをよく見ると、明らかに異なる地層が折り重なっているのが良く分かります。より分かり易い地層がこの先にあるようなので、楽しみにしながら進んで行きます。

ルートはその後林の中に入ります。そして、このトレイル初となるマーモットが登場。マーモットを見ると、「アルプスに来た!」という実感が湧いてきます。最初のうちは嬉しくて撮影に励みますが、その後も頻繁に登場するので撮影を放棄、というのが例年のパターン。ルートは再び開けた場所に戻ります。立派なカウベルを付けて放牧されている牛達も登場。夏のアルプス、定番の光景です。

山小屋ワラブッツ

このあたりの谷は、氷河が作り出したU字谷となっているので、台地の上から絶壁を流れ落ちる壮大な滝が幾つも登場します。これらもアルプス・トレイルの楽しみの一つ。雄大な絶景を眺めながら進んで行くと、山小屋ワラブッツ(Walabütz、標高1,361m)に到着。裏手に回ると、養豚が行われています。

この辺りから本格的な登りとなるので、ここで朝食休憩とします。朝露でまだ濡れている芝生の上にシートを拡げ、補給食用のパンにコーヒーを沸かして至福の一時を満喫です。出発してから約3時間が経過。

山小屋アルプ・フーへの登り

谷奥への登り

朝食を終えてトレイル再開。谷奥を目指して砂利道を登っていきます。ルートは一気に荒々しくなり、上部より崩落してきた大小多くの岩がある中を進んで行きます。高度も上がるので、振り返ると踏破してきたルートを一望出来ます。

途中、ルートを遮るように小川も流れていますが、登山靴を履いているので、問題なく渡渉出来ます。また、このルートは牛達も通るようで、足場はしっかりと固められているうえ、転落防止用のロープも設置されているので、見た目以上に安心感があります。

急峻な谷奥への登りを超えると、その先には新たな景色が拡がります。と、同時にこの谷はまだまだ先があることを認識。傾斜は少し緩やかとなり、周辺には牧草地が拡がっています。ルート上を含めあちこちで朝食を終えた牛達がのんびりとくつろぎ、こちらを出迎えてくれました。周辺の迫力ある景色に見惚れていると、上空を巨大なワシが飛んでいきました。急いでカメラで追うと、ちょうど羽を休めたので望遠で撮影。ドイツの国鳥、ゴールデン・イーグル(イヌワシ)です!

お花シリーズ1

そしてこの辺りから、アルプスの花々が一気に咲き誇ります。次から次へと綺麗な花々が登場するので、ここで幾つかご紹介。

山小屋アルプ・フー

撮影スポットが沢山あり、速度が全く上がりませんが、次の目的地である山小屋アルプ・フー(Alp Foo、標高1,881m)を目指して登っていきます。谷底を流れる川沿いを進んでいくと、正面には巨大なカール地形が出現。続いて、ルートは右側斜面への急登へ。崖側には転落防止用のロープも設置されています。

これを登って高度を上げていくと、カールの全貌が見えてきました。随所に残雪もあり、大迫力の光景です。そして手前の斜面には色とりどりの花々が見事に咲き誇っているので、何度も撮影に励んでしまいました。写真撮影を終えて、しばらく登ると、山小屋アルプ・フーに到着です。

フー峠越え

お花シリーズ2

山小屋を超えると、ここからも絶景の連続。花々はさらに種類が増え、撮影にもより一層熱が入ります。本編に入る前に、ここでも周辺の花々をご紹介。

アルペン・ローズ

アルプスの代名詞、アルペン・ローズも最盛期。山のあちこちがピンク色に染まっています。この時は6月中旬でしたが、これまで訪れた中でも最も満開のタイミングでした。

フー峠への登り

本編に戻り、トレイル再開。美しいカールに別れを告げて、ルートはカールと反対側の谷奥へと進んで行きます。上り坂を一つ越えると、ついにフー峠が姿を現しました。白い花が一面に咲き誇る中、平坦な道を峠手前まで進みます。途中、マーモットが数匹出現。しばらく鑑賞した後、すぐに出発。なお、進路右手側の山には特徴的な断層が見えます。

そして最後の登りに取り掛かります。といっても、それほど険しくなく、10分弱で踏破。本日の最高地点、フー峠に到着(Foopass、標高2,223m)。

フー峠

峠からは踏破してきたルートは勿論、これから向かうエルム方面の新たな景色も一望出来ます。折角なのでここでランチ休憩。特徴的な断層の山塊もここから良く見えます。峠からエルムまでは残り約2時間45分。

エルムへの下り

山小屋ラミナー・マット

峠からは、遥か先まで見通せる気持ちの良い下りが続きます。ルート脇には、引き続き美しい花々が咲き誇り、一気に斜面を下りたい気持ちを抑えて撮影に励みます。それでも30分程で山小屋ラミナー・マット(Raminer Matt、標高1,897m)に到着。この周辺ではチーズ作りが盛んに行われており、チーズを作る小屋を巡るトレイルも整備されていました。

グメインマッド分岐点

山小屋を後に更に下ってくると、前方には世界遺産の名がついたサルドナ山が出現。ルートは山道から車も通れる整備された砂利道へ。農家の手前に水場があったので、ここで水を補給。しばし休憩した後、下りを再開。すると、今度は不思議な石を発見。化石のようにも見えます。山小屋から30分程でグメインマッド(Gmeinmad、標高1,680m)の分岐点に到着。

チュントリ分岐点

ルートは、放牧された牛達がくつろぐ放牧地を通り抜け、道幅の広い砂利道へ。足へのダメージが蓄積されてきますが、豪快に流れ落ちる滝などを鑑賞しつつ、テンポよく下って行きます。50分程下ると、ルートは一旦アスファルトの道路へ。先へ進んでいくと、ついに本日のゴールであるエルムの村が見えました。

再び遊歩道に入り、10分程度下ると、チュントリ(Zündli、標高1,039m)分岐点に到着。

エルム

分岐点からのんびり20分程下ってくると、ついにエルム(Elm、標高960m)の村に到着。今日の宿へと向かう前に、まずはスーパーへ立ち寄ります。そこにはお目当てのスタンプが。今日の収穫は、フー峠とエルムの村の2つ。特に峠のスタンプは今回が初です。

エルムは静かな山間の村ですが、ここには「セント・マーチンの穴」と呼ばれる有名な見所があります。年に2回、太陽の光がこの穴の窓を通ってエルム教会の塔にあたる、との由。そしてエルムのスタンプは、セント・マーチンの穴が光り輝くデザインとなっています。なお、村内にはサルドナ世界遺産に関する博物館や記載が多数あり、事前に連絡を取ったところ、とても丁寧に対応してもらいました。それはまた別の機会でご紹介。今回はここまで。

(ご参考)【世界遺産】サルドナ地殻変動地帯~スイス・ヴィア・アルピナ番外編

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