スイス国内を東から西へと横断する総距離390kmのロングトレイル、スイス・ヴィアアルピナ1(別名:クロッシングスイス、 Crossing Switzerland)。スイス隣国リヒテンシュタインの首都ファドゥーツを出発し、スイス国内の風光明媚な絶景を満喫しつつ、全20ステージ・14の峠を越えて(累積標高差23,600m)、レマン湖畔の町モントルーを目指します。今回は6日目(ウルナーボーデン~アルトドルフ)編です(概要編はこちら)。
ウルナーボーデン出発
ウルナーボーデン
今日の行程は、宿泊地ウルナーボーデン(Urnerboden、標高1,383m)からクラウセン峠(Klausenpass、標高1,948m)へと登り、スイスの英雄ウイリアム・テル生誕の地であるアルトドルフ(Altdorf、標高458m)に下った後、隣町アティングハウゼンを目指す総距離31km(上り1050m、下り1900m)、コースタイム9時間半のタフな一日です。
そのため今朝は4時半に起床。昨夜宿の方にお願いしていた朝食を食堂の冷蔵庫から受け取った後、5時40分に宿を出発。朝焼けが始まる中、小高い丘の上にあるウルナーボーデンから川沿いのルートまで下ります。
幻想的な朝焼け
朝靄の中、U字谷の平らな谷に流れる川沿いのルートを上流へ向かって進んで行きます。振り返ると、そこには朝焼けと朝靄で幻想的な光景が出現!空は黄金色に輝き、それが朝靄に反射されて辺り一面オレンジ色。この地形ならでは美しい光景に、朝一から撮影に励んでしまいました。
川沿いのルート
撮影を終えてトレイル再開、谷奥目指して進みます。両端の切り立つ岩山にも朝日が辺り、山肌が赤く染まっています。このあたりでもサルドナ地殻変動地帯の複雑な断層が見て取れます(解説についてはこちら)。ルートは徐々に川沿いを離れ、峠を目指して急登が始まります。
クラウセン峠
一段目の峠
九十九折りの道路が通る急峻な山肌を、トレイルルートは一気に急登していきます。高度が上がると、これまで見えていなかった遠方の山並みが望めるようになり、頂上付近には氷河を纏っています。振り返ると、ウルナーボーデンのある綺麗なU字谷がはっきりと見えます。
まだ朝早い時間帯ですが、峠へ向かう道路にはツーリングのバイカーやキャンピングカー、また朝一で搾乳した新鮮なミルクを運搬するトラックの姿が多数見えます。そうこうしている間に斜度が緩やかになってきたので、峠が近いのかもしれません。酪農家の家屋が見えると、すぐに案内板を発見。フォラフルット(Vorfrutt、標高1,816m)と記載されているので、本当の峠はまだこの先です。
二段目の峠
フォラフルットからはU字谷を横切るようにして反対側の斜面へと進みます。酪農家の家屋を越えて斜面中腹あたりまで登ってくると、U字谷が再び良く見えます。付近を道路が通っているため、普段の峠越えと異なり少し騒がしさがあるものの、周囲を見渡せば雄大な景色が楽しめます。斜度はますます緩くなり、ほとんど平坦な道を進んで行くと、今度こそ峠らしき場所が見えてきました。
クラウセン峠
トレイル道を進んで行くと、道路に合流。8時10分、今日の最高地点であるクラウセン峠(標高1,948m)に到着。峠にはレストランや売店があり、朝早くにも関わらず、多くの観光客で賑わっています。またここはロードバイクのヒルクライムルートとしても人気があるようで、自転車マークの付いた峠の標識もあります。
喧噪を避けるようにして、先へ進んで行くと、少し小高い場所に礼拝堂がありました。中に入って旅の安全を祈念した後、本日二度目の朝食を簡単に取ることにします。尚、この峠には公衆トイレもあります。
シュピリンゲンへの下り
峠からの下り
峠の先からトレイルに入りますが、駐車場は既に満車状態。ここに車を停めてルートを下るハイカーも大勢います。登りの時は殆どハイカーを見かけませんでしたが、ここで一気に人が急増。遥か先の景色まで見渡せる、気持ちの良いルートです。次の目的地シュピリンゲン(spiringen、標高938m)までは約1,000mの下り。所要時間は約4時間10分。
8時40分、トレイル再開。今日は天気が良く、見晴らしも抜群。撮影のために時折立ち止まりますが、それでも速いペースでどんどん下って行きます。遥か先に見えていた台地の端に到着すると、ルートは砂利道の農道に合流。谷向こうには迫力ある山塊が迫っており、頂上部には氷河も見えます。歩き易いルートを進んで行くと、分岐点(Vorderen Rustigen、標高1,798m)に差し掛かります。
その後も、ルートは見晴らしの良い道が続きます。幾つかの家屋が立ち並ぶ場所(Heidmanegg、標高1,822m)に出ました。伝統的な家屋のスタイルではあるものの、近年建てられた家屋もあります。その一角には、冷蔵庫の無人販売所があり、休憩場所として良さそうですが、休憩後まだ間も無いので先へと進みます。
ウリゲン
売店を後にして気持ちの良いルートを下ってくると、見慣れた低木を発見。野生のブルーベリーです。美味しそうな実が沢山なっているので、ここで少し栄養補給。ブルーベリーは放牧されている牛達が枝ごと食べていたりするので、綺麗そうな場所を選んで実を集めます。爽やかな酸味があり、疲れた体もリフレッシュ。
周囲には木々が増えてきました。どうやらこの辺りが森林限界のようです。放牧された牛の群れを通り過ぎると、徐々に家屋も出てきました。芝刈りを終えたばかりの歩き易い道を集落の方へ下って行くと、ウリゲン(Urigen、標高1,280m)に到着。時刻は丁度12時、お昼時なのでレストランには観光客が大勢います。
シュピリンゲン
ウリゲンからシュピリンゲンまでは約50分。ルートも農道や整備された砂利道となり、人里へ戻ってきた感覚です。標高が下がったために、暑さも厳しくなり、水分補給量も急増。教会の塔が見えました。シュピリンゲン(標高938m)に到着。教会の裏手に水場があったので、給水パックにしっかりと補充。ランチ休憩にしたいところですが、涼しい日影の場所が見当たらず、もう少し先へ進みます。
シュピリンゲンから道路沿いを下ってくると、分岐点(Eggenbergli Talstation、標高774m)に出ます。ここで橋を渡ります。橋の上は冷たくて心地よい風が吹いています。川の近くで丁度日陰の場所を見つけたので、ここでランチ休憩。コーヒーも沸かして、ゆっくりと休みます。食事後には仮眠をとり、体力回復に努めます。
アルトドルフ
ウィリアム・テル
1時間程ゆっくりと休憩を取り、14時20分トレイル再開。ルートは、トレイル用の歩き道から農道、再び歩き道へという具合に続きます。集落を幾つか越えて下ってくると、ようやくアルトドルフの町が見えてきました。その後、川を渡り、林を下り、川沿いの道を進んで行くと、ビュルグレン(Burglen、標高535m)に到着です。
今日のルートでは、「ウイリアム・テル」に関する看板や案内板が度々登場していました。子供の頭の上に置いたりんごを弓で射抜いた伝説を持つスイスの英雄ですが、このビュルグレンがウイリアム・テル生誕の地。ここにはテル・ミュージアムや彼に由来する教会、礼拝堂、像などがあります。立ち寄りたい所ではありますが、今回は断念、先へと進みます。
アルトドルフ
ウイリアム・テル伝説に思いを馳せつつ、さらに下ってくるとアルトドルフ(標高458m)の町に入りました。中心部にある観光案内所へと進み、そこで大事なスタンプをゲット。時刻は16時半。木陰のベンチで一休みしてから、最後の力を振り絞って隣町アティングハウゼンへ向けて出発。
アティングハウゼン
市内に入り、ルートは道路を進みます。アスファルトの上は暑さが一段と厳しく、疲労もピークに。ルートのあちこちに小さな旗が置かれています。何かの大会を開催しているようですが、それを気にする余裕も無く、とにかく今日の宿泊先を目指します。アルトドルフから約50分、アティングハウゼン(Attinghausen)へ。
17時20分、ついに宿へ到着。朝早く出たおかげで、暗くなる前に無事宿へ辿り着けました。今日のスタンプは2つ。クラウセン峠とアルトドルフ。峠は花柄、アルトドルフはウイリアム・テル。宿で落ち着くと、夕焼けに染まるアルトドルフが見えます。今日は疲労困憊、早く休んで明日に備えます。今回はここまで。
コメント