スイス国内を東から西へと横断する総距離390kmのロングトレイル、スイス・ヴィアアルピナ1(別名:クロッシングスイス、 Crossing Switzerland)。スイス隣国リヒテンシュタインの首都ファドゥーツを出発し、スイス国内の風光明媚な絶景を満喫しつつ、全20ステージ・14の峠を越えて(累積標高差23,600m)、レマン湖畔の町モントルーを目指します。今回は7日目(アルトドルフ~エンゲルベルグ)編です(概要編はこちら)。
ブリュシュティ
宿泊地アティングハウゼン出発
今日の行程は、アルトドルフの隣町アティングハウゼン(Attinghausen、標高469m)からズレネン峠(Surenenpass、標高2,292m)へと登り、山岳リゾートとして有名なエンゲルベルグ(Engelberg、標高1,004m)へと下る総距離26km(上り2,100m、下り1,500m)、コースタイム10時間半の過酷な一日です。
今朝は5時出発、夜明け前なのでヘッドライトを付けて進みます。最初の目的地は、ズレネン峠への中間地点にあたるブリュシュティ(Brüsti、標高1,525m)。30分程進むと、空が明るくなってきました。麓のゴンドラ駅に到着。ブリュシュティにはゴンドラで向かうことも出来ますが、今回は自力で登ります。
トレイルランナー
今朝は不思議なことに、ゼッケンをつけた多くのランナーが同じ道を登っていきます。より正確に言えば、出発した夜明け前はルート脇で寝ている人も多数います。昨日からルート沿いに旗が設置されていたので、不思議に思っていましたが、これで理由が判明。「Crossing Switzerland」と呼ばれる、スイス横断のトレイルランニングのレース第1回目です。何とルートは今回のロングトレイルそのもの。
宿で熟睡している間に先頭集団が通り過ぎ、それを追う上位集団と遭遇した模様。各ランナーとも既に相当の無理をしているようですが、それでも勢いよく坂道を登っていきます。普段は静かな早朝のトレイルが、この日ばかりは大賑わい。次から次へとランナーに追い抜かれました。
ブリュシュティ
さて、多くのランナーの後を追ってペース良く登ってくると、酪農家の家屋が出てきました。7時20分、ここで朝食タイムとします。シートを拡げて朝食を取っていると、その前を多くのランナーが通り過ぎていきます。日本人らしき人もいたので、日本語でエールを送ります。ランナーもまさかこんなところで日本人が声をかけてくるとは思わず、結構驚いた表情をしていました。
30分程休憩を取った後、トレイルを再開。20分弱でブリュシュティのゴンドラ駅(標高1,525m)に到着。見晴らしの良い場所には木製の額縁が設けられ、写真撮影に励むよう促されます。ゴンドラ駅を通り過ぎて更に登っていくと、山小屋カトリーナ(CATRINA)が見えてきました。どうやらここはランナーの食事・休憩場所に指定されているようで、先程追い抜いて行ったランナー達も食事中です。
ズレネン峠
アルプ・グラット
ブリュシュティからズレネン峠までは2時間50分。これからまだまだ登りが続きます。山小屋を通り過ぎると、野生のブルーベリー畑を発見。早速、新鮮な実を頂きリフレッシュ。さらに進んで行くと、キャンプ地を発見。何組かのキャンパーがテントを張っています。ここには水場やトイレもあるようです。ランナーと間違われたのか、すごい激励を頂きました。
テント場から進んでくると、見晴らしの良い場所に出ました。進行方向右手の視界が開け、眼下には綺麗な放牧地が拡がっています。木々も一定の高さを超えると、ほとんど見当たりません。あの境目が森林限界のようです。
先へ進むと、今度は進行方向右手側が切れ落ちた場所に出ました。左手側には雄大な景色。眼下の深い谷は氷河で削られたのでしょうか。ルートは稜線の上へと続き、道幅は狭く、両端にはロープが張られています。階段状に整備された坂道を登り終えると、道幅が広くなり、前方の視界も開けました。遥か先には山小屋が見えます。アルプ・グラット(Alp Grat、標高1,820m)に到着です。
一段目の峠
このあたりは傾斜が緩やかで牧草地が拡がります。カウベルの音が鳴り響く中を進んで行くと、放牧された牛達が登場。しばらく進むと、稜線上に出ます。両側とも雄大な景色が拡がり、気持ちの良いルートが続きます。本日のコースの中でも屈指の絶景を堪能しながらのんびり進んで行くと、後方からは多くのランナーがやってきます。中には、厳しい暑さを凌ぐため、牛達の水場で水浴びをするランナーも。
豊かな牧草花や牛の活気あふれるルートが終わり、峠越えに差し掛かります。ズレネン峠はもっと先の方に見えたので、ここは一段目の峠。天空に向かって続く坂道を登り終え、最初の峠(Angiestock、標高2,060m)に到着。標識によれば、ズレネン峠まではここから1時間、本日のゴール、エンゲルベルまでは5時間10分。
ズレネン峠
ここからいよいよ本格的な峠越えに入ります。ルートは右側ガレ場斜面をトラバースするコースと、左手側から回り込むコースの2つがあります。右手は落石の危険があるため、ガイドブックの通り左手コースを進みます。こちらも岩場を通りますが、ルートはよく整備されています。雪渓の脇を進み、徐々に高度を上げていきます。
峠が徐々に近くなり、大分登ってきました。振り返ると、これまで踏破してきたルートが一望出来ます。暑さを除けば、天候もよく見晴らし抜群、本当に気持ちの良いルートです。そして最後の一登りへ。緑で覆われていますが、足元はガレ場もあるので慎重に進みます。11時30分、ついにズレネン峠に到着。
ズレネン峠からの景色
ズレネン峠(Surenenpass、標高2,291m)からは、これから進むルートとこれまで踏破してきたルートの両方が一望出来ます。峠には比較的スペースがあり、多くのハイカーがランチ休憩を取っていました。エンゲルベルグまではここから4時間15分かかるので、峠では写真撮影のみとし、先へと急ぎます。
また峠へのルートには多くの綺麗な花々が咲いていました。この美しい花々に心癒されます。
エンゲルベルグ
ブラッケンアルプ
次の目的地はブラッケンアルプ(Blackenalp、標高1,773m)、峠からは1時間。氷河まで見渡せる絶景の中を下って行きます。すると、小さな小屋があり、その日陰で放牧された羊達が涼んでいました。さらに下って行くと、今度は牛達が草を食んでいます。ズレネン峠が遠くなってきました。
この辺りの岩山には斜めに断層が走っており、ここにもアルプス造山活動の痕跡が見て取れます。さらに下ると、今度は巨大な氷河地形「カール」が出現。どの景色も雄大そのもの。周囲を満喫しながら進むと、ブラッケンアルプに到着。
そしてここもトレイルレース参加者用の休憩場所に指定されていました。近くには多くの小さな小旗があり、更には「食事処まであと500m!」の看板も。
山小屋アルペンローズ
今日のゴール、エンゲルベルグまではここから3時間15分。続々とランナーが到着する中、ブラッケンアルプを出発。すぐ先にある小さな礼拝堂で旅の安全を祈念した後、氷河を望みながら気持ちの良いルートを進んで行くと、フュレンアルプ(Furenalp)と書かれた看板を発見。どうやら、この辺り一帯は冬場にスキー場となるようです。
周囲を見渡すと、落差のある雄大な滝が随所にあり、氷河から溶け出た水が急峻な斜面を一気に流れ落ちています。歩き易い砂利道をどんどん下り、売店のあるスタフェリ(Stafeli、標高1,393m)を過ぎてさらに進むと、山小屋アルペンローズ(Alpenrosli、標高1,258m)に到着。ここで水を補給し、一休み。
エンゲルベルグ
エンゲルベルグまでは残り2時間。標高が低くなり、熱波の影響で暑さも大分厳しくなってきました。緩やかな下りですが、ここまでの長丁場で既に疲労困憊。周囲の絶景に癒されながら、放牧された牛達の脇を通って下って行きます。遥か先にはエンゲルベルグの町がついに見えてきました。ゴンドラ駅を過ぎると、徐々に人里に入ります。
大きな修道院の裏手を横切り先へ進むと、ついにエンゲルベルグに到着。オープンテラスで食事している人やレストランのウエイターからは、温かい拍手で出迎えられました。おそらくレースのランナーと間違われたのだと思いますが、ここまで同じルートを踏破してきたことも事実なので、気持ちよく手を振り返しておきました。
エンゲルベルグ散策
スタンプボックス
宿へ着く前に、まずはインフォメーション・センターへ。ここにスタンプボックスがあります。ボックスを開けると、今回は3つのスタンプ。ズレネン峠とエンゲルベルグに加えて、ご褒美のスペシャルスタンプ。水晶の図柄です。
修道院
宿へ向かう前に、もう一カ所寄り道。先程、裏手を通ってきた修道院です。以前にも訪れたことがあり、以下記事で触れているので今回は割愛。
長かった一日もこれで終了、今回はここまで。
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