【フランス】セザンヌのアトリエ訪問

フランス

「大水浴図」や「サント・ヴィクトール山」、「カード遊びをする人々」などの代表作で知られるフランスの画家ポール・セザンヌ。晩年の創作活動の拠点としたアトリエが、故郷である南フランスの町エクス=アン=プロヴァンスにあります。このアトリエと共に、セザンヌゆかりの場所を訪れてみました。

ポール・セザンヌとは

「大水浴図」や「サント・ヴィクトール山」、「カード遊びをする人々」などの代表作で知られるフランスの画家ポール・セザンヌ(Paul Cezanne、1839-1906、享年67才)。南フランスの町エクス=アン=プロヴァンス出身。

当初はクロード・モネやルノワールなどと共に印象派のグループとして活動していたものの、1880年代(40才頃)からは創作活動の拠点をパリから故郷のエクス=アン=プロヴァンスへ移し独自の絵画様式を追求。後期印象派を代表する画家として、キュビスムなど20世紀の美術に多大な影響を与えたことから、「近代絵画の父」と評されています。

(ご参考)【フランス】ジヴェルニー~クロード・モネの理想郷

アトリエ訪問

アトリエの概要

今回訪れたのは、晩年のセザンヌが創作活動の拠点としたアトリエです。1901年に土地を購入し翌年に建物が完成、1906年に亡くなるまでこのアトリエで創作活動を行いました。アトリエは、エクス=アン=プロヴァンスの町を眺望できる「ローブの丘」へと続く道路沿いにあります。

アトリエにはエクス=アン=プロヴァンスの町から徒歩で10分強。アトリエに寝室は無く、セザンヌは町中のアパートに暮らし、毎朝6-10時半の間にアトリエへ行き、食事のために町へ戻り、その後モチーフや風景を描きに出かけて夕方5時頃に戻る生活をしていたようです。

アトリエに訪問する際は事前予約が必要です。定員に空きがある場合には、現地でもチケットを購入できますが、予め営業時間含めてウェブサイトでチェックするのが無難です。1階の受付で登録してチケットを発券後、時間になると係の人が集合場所であるアトリエの玄関に呼びに来て、一行を2階へ案内します。アトリエは、この2階の一部屋。美術館ではなく、作品は所蔵していません。キャプション等もないので、リーフレット(日本語なし)を見ながらアトリエを見学する人が多いですが、オーディオ・ガイド(別料金、日本語あり)も借りることができます。

アトリエのウェブサイト

アトリエ内

それではアトリエ内へと入ります。2階の大きな部屋の入口正面(西側)には、セザンヌが愛用した静物画のモデルや絵の道具、彼の服などが所狭しと並んでいます。正面右手(北側)には明り取りの大きな窓、左手(南側)にも大きな2つの窓。エクス=アン=プロヴァンスの町の方角です。

なお、北側の窓の端には、不自然に作られた縦長の溝があります。この隙間は、「大水浴図」など大きなカンヴァスを外へ出すために壁を穿ち抜いた「絵の通路」。そしてこの部屋には、家具や装飾など画家の精神集中を邪魔するものは、一切ありません。

セザンヌはこのアトリエを瞑想と制作の場として使用していました。飾られた数々の愛用品などからセザンヌが「実在した人物」であることを強く感じます。解説によれば、晴れた日には「モチーフ」に基づいて描くために出かけたが、雨の日や寒さが厳しい日には、家の中で自分の静物画のモデルとなった品々に囲まれていた、とか。そして世界中の美術館に現存する数十点の作品がこの光と沈黙のアトリエ、またはその周囲で制作された、と。

静物画のモデル

静物画のモデルは、セザンヌが引っ越すたびに一緒に旅をしてきた愛用の品々。まずは石膏のアムール像。油彩画5点、水彩画5点に登場。最初の作品は1867年。緑色の壺はオリーブ入れで、セザンヌが一番頻繁に描いたモデル。プロヴァンスの陶器で、油彩画17点、水彩画5点に登場。最初の作品は1867-69年「緑色の壺と錫の湯沸かし(オルセー美術館所蔵)」。

青と白の壺はショウガ壺。中国からの輸入品でショウガの根を入れていたもの。プロヴァンスの食料品店で買い求めたと思われる。油彩画12点、水彩画2点に登場。ラム酒の瓶は、「ジャマイカ・ラム古酒-登録商標-W-TOMSK-キングストンー登録済みーインレジステッド」と記されたラベル付き。油彩画6点、水彩画1点に登場。

このほかにも、白い果物皿(油彩画5点)やイエズス会のロザリオなど、有名なモデルが多数展示されています。セザンヌは同じモデルを何度も描き、その作品群は今でも各地の美術館に現存していますので、今後これらの絵画を鑑賞する時には、目の前に置かれたモデルを思い浮かべながら楽しみたいと思います。

アトリエの庭

建物の外には庭があり、散歩道が整備されています。建物裏手にくると、外からアトリエを見ることが出来ます。先程見た北側の大きな窓、その横には「絵の通路」も。実際に大きな絵を出し入れするとなると、結構大変そうです。

セザンヌゆかりのスポット

ローブの丘

続いてセザンヌゆかりのスポットへ足を延ばしてみました。代表作「サント・ヴィクトール山」を描いた「ローブの丘」には、セザンヌのアトリエから徒歩で約10分。日の出のタイミングを狙って出発です。丘の上へと続く小道に到着、ここは現在公園になっています。

丘の上まで来ると辺りは朝焼けで真っ赤に。その一角には、セザンヌが季節毎に描いたヴィクトール山の絵の複製が数点展示されています。解説版によると、セザンヌはこの場所で山を描いていたようです。今では目の前の木々に遮られてヴィクトール山をはっきりと見ることは出来ないものの、当時は遮られるものも無く、絶好の写生スポットでした。

サント・ヴィクトール山

サント・ヴィクトール山はエクス=アン=プロヴァンスの市内からも眺めることが出来ます。セザンヌが愛したこの山に登ってみたいと思います!

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