春を青く彩るユキゲユリ(雪解百合、チオノドクサ)【ドイツ/イギリス】

ユキゲユリ群生2 イギリス

ヨーロッパでは春先に様々な植物が芽吹き、色とりどりの花が咲き誇ります。青紫色の花では、クロッカスが見頃を過ぎると、ユキゲユリ(和名。学名はチオノドクサ)が主役となります。この種は早春から咲き始めますが、春も進み気候が良くなる中で一際鮮やかな群生が見られるようになり、存在感を一気に高めます。

ヨーロッパに自生する草花を楽しむシリーズ。他にスノードロップキバナセツブンソウクロッカス

ユキゲユリ(チオノドクサ)とは

基礎情報

学名はチオノドクサ、和名をユキドケユリ、またはユキゲユリ(雪解百合)。青色の花が良く知られているものの、白や紫、ピンク色の花もあります。花の直径は2cm程の小さな花です。

また、NHK趣味の園芸によると、

チオノドクサは寒中から咲き始める早春の花で、いち早く春の訪れを告げるように花壇を明るく彩る。キラキラと輝くような美しさがあり、群生させると見事。スノードロップやクロッカスなどと同様に花は霜や凍結に強い。
キジカクシ科(クサスギカズラ科)チオノドクサ属だが、ヒアシンス科やユリ科で分類される場合もある。クレタ島、キプロス島、トルコを原産とする多年草で、秋植え球根。草丈は10~15cm、開花期は2月中旬~4月中旬。花色は青から紫、ピンク、白。

命名について

ユキゲユリの学名チオノドクサ(Chionodoxa)は、ギリシャ語で chion(雪)+ doxa(δόξα、輝き)の意です。和名もこの意が反映されていますが、チオノドクサの命名者は、スイスの植物学者、探検家、そして数学者でもあるピエール・エドモンド・ボワシエ(1810-1885)です。

種小名(注:生物の二名法による学名、属名のあとに付ける名称)は、チオノドクサ・ルシリアエ(Chionodoxa luciliae)ですが、この「ルシリアエ」とは、命名者の妻ルシール・ボワシエ(1822-1849)に由来。ルシールは1840年に結婚し、夫と共に新しい植物を求めて東洋、中東、北アフリカを歴訪。スペイン・アルジェリアへ訪問した際、伝染病が原因で27 歳の若さで病没。

ピエール・ボワシエは19世紀で最も偉大な植物収集家の一人であり、多くの重要な著書を出版しました。1867年に出版された本には11,681種の東洋植物が記載され、その多くは西洋世界では未知のものでした。ユキゲユリはトルコ西部で発見され、「地表にまだ雪が残る頃に咲くことが多い」ことから、この名が付けられました。

ドイツ

ドイツ名

ドイツではSternhyazinthen (スターヒアシンス)という名前ですが、和名と同様、学名に基づいた Schneeglanz(雪の輝き)、 Schneestolz(雪の輝き)、Schneeruhm(雪の栄光)といった呼ばれ方がされているようです。

青い花の絨毯(チオノドクサ-ルシリアエ・フォーベシー)

ドイツでこの花はとても気候が合うようで、公園や遊歩道脇の草地など至る所で群生しているのを見かけます。3月中旬頃から、まるで青い絨毯のように辺り一面に広がる美しい風景が楽しめます。ルシリアエ種とフォーベシー種、それにその交配種などが咲いています。

似ている花々(シラー属)

ドイツでは2月中旬頃からユキゲユリに似た白い花が咲きます。こちらは、現状シラー属のシラー・チュベルゲニアナと区分されていますが、シラー属とチオノドクサ属は分類が近いようで、確定には未だ議論の余地がある模様。実際、調べる国や文献によって、かなりの差があります。

この花は開花時期が早いので、キバナセツブンソウやスノードロップなどと一緒に咲いています。見かけた花には、細い青のラインが入っており、とても綺麗に咲いていました。ヒアシンス科に分類されるだけあり、見た目はヒアシンスに近い印象を受けます。

また、シラー・ビフォーリアと呼ばれる花も咲いています。一見同じように見えても微妙に異なる花々が多数あり、学説も夫々幾つもあるようです。調べれば調べるほど、奥が深く、とても興味深い花です。

イギリス

英名

イギリスでは、学名に加え、より親しみを込めて「Glory of the snow」と呼んでいます。これは学名に基づく英訳です。尚、イギリスの王立園芸協会(Royal Horticultural Society、RHS)ではチオノドクサをシラー属と整理していますが、この整理に関しては1990年代以降も多くの議論があるようです。

イギリスは原産地では無いものの、園芸用の品種が普及し、公園などでも見かけることが出来ます。RHSでは、1993年と2005年にこの花を英国の自然環境下でも育つ園芸植物として認知しています。

キューガーデンも群生している写真をインスタに投稿していました。

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