キバナセツブンソウ(黄花節分草、Winter aconite、Winterling、Winter Eisenhut)。ヨーロッパでは春の訪れを逸早く告げる花の一つとして知られています。日が短く寒さも厳しい大寒(1月下旬頃)の頃に黄色い鮮やかな蕾をつけ、名の由来である節分(2月3日頃)や立春(2月上旬頃)にかけて華やな黄色の花を咲かせます。
キバナセツブンソウとは
冬枯れの時期にヨーロッパへ訪れたことのある方やヨーロッパ在住者の皆さん、スノードロップが白く可憐な花を咲かせ、クロッカスが様々な色のつぼみをふくらませる頃に、鮮やかな黄色の小さな花を見かけたことはないですか?
この花は福寿草に似ていますが、日本では滅多に咲いていないキバナセツブンソウです。日本の白いセツブンソウと同じ仲間ですが、印象は異なるのではないでしょうか。
基礎情報
NHK趣味の園芸によれば、以下の解説です。
学名はEranthis hyemalis、キンポウゲ科 / セツブンソウ属で、原産地が南ヨーロッパ。草丈5~10cm、開花期2月~3月。小球根で花径2~3㎝ほどの小さな花。
光沢のある黄花を上向きに咲かせ、鮮やかな黄色が冬枯れのなかでかなり目立ちます。日本では自生地の保全が危惧されているセツブンソウの仲間です。
イギリスやドイツでは、大寒(1月20日)を過ぎた頃から、スノードロップに先駆けて鮮やかな黄色の蕾を見かけるようになり、その後スノードロップやクロッカス等と一緒に咲く姿を見かけます。森や公園では木陰に群生し辺り一面が黄色の花で埋め尽くされていたり、道端に一輪だけで咲いていたり、庭に植えられていたりと、この時期になると様々なところで見かけることができます。
学名Eranthis hyemalisは、Eranthisがギリシャ語の春(ἦρer)と花(ἄνθοςanthos)に由来し、hyemalisはラテン語で冬の花を指します。「春、花」+「冬の花」で、春を告げる花という意味でしょうか。開花時期や花の色、大きさなどから同じキンポウゲ科のフクジュソウと混同し易いですが、葉や花の形状が異なります。なお、日本の固有種は「セツブンソウ」と呼ばれ花は白色です。
ドイツ
キバナセツブンソウはドイツではWinterlingと呼ばれ、冬を代表する花に位置づけられます。原産地は南ヨーロッパのフランス南東部からイタリア、ハンガリーを経由してブルガリアやトルコに広がる地域で、ドイツには人の手によって運ばれたと考えられています。ドイツの公園や森林では、原産地ではないものの至る所に群生地が拡がり、比較的容易に見つけることが出来ます。
キバナセツブンソウのドイツにおける観賞植物としての歴史は、16世紀後半まで遡ります。医師で動物、植物学者でもあったヨアヒム・カメラリウス(der Jüngere、1534-1598)が1588年の自著の中に、ニュルンベルクで栽培していた記録を残しています。
彼はドイツ初の植物園を作ったメンバーの一人です。当時植物園はイタリアのみで、この苗はイタリア渡航時に持ち帰ったようです。17世紀前半には多くのガーデンで栽培されるようになり、18世紀末には当時主流のランドスケープガーデンという、人の手を多くいれた庭で人気を博しました。その後は公園等にも自生し、気候の良い地域に広がっています。
Original book source: Prof. Dr. Otto Wilhelm Thomé Flora von Deutschland, Österreich und der Schweiz 1885, Gera, Germany
Permission granted to use under GFDL by Kurt Stueber
Source: www.biolib.de
また、ミツバチにとってこの花は、その年初の花蜜と花粉を貰える重要な植物です。ポーランドでの研究結果によれば、一輪あたり約1.23 mgの蜜が生成され、糖濃度は約72%だそうです。気温が10〜12°Cに上がる晴れた冬の日には、ミツバチが今年初の蜜を求めて、この花へ近づく姿を見かけられるかもしれません。
イギリス
キバナセツブンソウの英名はウィンター・アコナイト(Winter aconite)。アコナイトとはトリカブトの主要な毒成分で、トリカブトの英名です。ドイツ語でもWinter Eisenhut=冬のトリカブトという別名があります。トリカブト同様、球根の塊茎部には猛毒があるので、取り扱いには注意が必要です。
イギリスの森林や公園ではあまり見かけることはないですが、イングリッシュガーデンでは初春頃に植えられていたりもします。特徴的な黄色の花ですので、すぐにわかると思います。
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